現地10月23日、世界陸上連盟の独立監査機関「アスリート・インテグリティー・ユニット」（AIU）は、女子マラソンの世界記録保持者ルース・チェプンゲティッチ（ケニア）に３年間の資格停止処分を科したと発表した。同選手は禁止薬物の使用により暫定的な資格停止処分を受けていた。

　チェプンゲティッチは2019年の世界陸上ドーハ大会の金メダリストで、24年のシカゴマラソンでは女子選手として史上初めて２時間10分の壁を破る、いわゆる“サブテン”を突破。２時間９分56秒の驚異的な世界新記録をマークした。

　AIUは世界記録保持者について、「３月14日のサンプルから禁止薬物の陽性反応が出た後、AIUの調査を経て処分と制裁措置を受け入れた」と説明。以下のように続ける。

「利尿剤は他の禁止物質の尿中での隠蔽への悪用で知られているが、HTCZは医薬品の汚染物質としても特定されている。WADAはHTCZに対し20ng/mlの最小報告限界を設定しており、この値を下回る陽性反応は報告すべきではないとしている。チェプゲティッチの陽性尿サンプルからは推定濃度3800ng/mLのHTCZが検出された」

　その後、チェプンゲティッチはAIUによる２度の聞き取り調査に対してドーピングを否定していたが、７月31日に説明を変更したという。
  「AIUに書面で、陽性反応の２日前に体調を崩し、禁止物質が含まれているか確認することなく、お手伝いの薬を服用したことを思い出したと述べた。この件をAIU調査官に開示し忘れていたとした。彼女が送った薬のブリスターパック写真には『ヒドロクロロチアジド』と明記されていた」

　そしてAIUは４年間の制裁通知を発行し、選手本人の早期自白・制裁受諾条項により１年間の減刑を受けた。

　今回の件で、偉大な記録は抹消されてしまうのか。AIU責任者ブレット・クロージャー氏は、こうコメントしている。

「HTCZの陽性反応に関する件は解決したが、AIUは他の違反が発生していないか判断するため、チェプゲティッチの携帯電話から回収された疑わしい資料の調査を継続する。その間、2025年３月14日のサンプル以前のチェプゲティッチの全ての記録と成績は維持される」

　処分期間は今年４月19日からとなる。女子マラソン史上初の“サブテン”が残るか否かは、今後の調査結果次第のようだ。

構成●THE DIGEST編集部

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