フィギュアスケートのグランプリシリーズ第４戦NHK杯は11月７日、大阪・東和薬品ラクタブドームで開幕した。女子ショートは前世界女王の坂本花織が77.05点の今季シーズンベストで首位発進。大会４度目の戴冠を視界に捉えた。今季で現役引退する坂本には海外スケーターから惜しむ声が寄せられている。

　２年前にさいたまスーパーアリーナで開催された世界選手権で銅メダルに輝いたルナ・ヘンドリックス。ショートプログラムは４番滑走で登場し、62.45点で４位とフリーに向けて好位置につけた。

　演技後、好演技を披露したベルギースケーターを取材エリアで直撃した。前日はあまり眠れず、いつもより緊張が高まっていたと切り出した彼女は「言い訳はできないわ。今日は自分の日ではなかったと思うの。もっと上手くできるはずだし、次の大会ではショートプログラムで良い演技ができることを願うわ」と貪欲に、そして前を見据えた。

　ショートはセリーヌ・ディオンが歌い上げる『Ashes』。MARVELの映画『デッドプール２』のオープニングテーマ曲だ。「最初はセリーヌが歌う『It's all coming back to me now』を滑ってたけど、この曲で滑りたいとずっと思ってたの！ 22年の北京五輪の時には準備が短すぎたから、兄とチームに『ミラノ・コルティナ五輪まで取っておきたい』と伝えた特別なプログラムよ。ブラッシュアップして、本当にこの雰囲気が気に入っているの」と興奮気味に話し、勝負の五輪シーズンに懸ける思いを述べた。
  　また今季限りで引退する坂本について話題を変えると、「カオリと一緒に滑るのが今季で最後になるなんて...本当に寂しいわ」と本音をポツリ。「カオリは本当に素晴らしいスケーターよ。私は彼女を本当に尊敬していて、カオリのことを心から称賛しているわ。彼女の演技はいつも安定していて、常に高いレベルを維持している。長い時間を経て彼女と再会できたのは嬉しいし、ここで過ごす時間は素晴らしいわ」と声を弾ませた。

　今月５日には26歳の誕生日を迎えた。今年は日本で過ごすことになった記念日は来日した際に時差の影響で到着したのが５日の午後。「半日しか過ごせなかったの」と苦笑いを浮かべつつ、「長い移動日の後でとても疲れていたけど、夜には焼肉でお祝いをしたの。すごく美味しかった！」と束の間の日本食を楽しんだことを明かした。

　今大会のNHK杯をはじめ国内のアイスショーでもたびたび来日経験があるヘンドリックス。日本への愛情は最後まで止まらなかった。

「日本のファンの皆さんはいつも素晴らしい応援と温かいサポートをしてくれるから、とても大好きよ。日本にもう一度来ることができると知ったときは、飛び跳ねるほど嬉しかったの！ 人々はとても親切だし、素晴らしい気持ちにさせてくれるから。これからも応援してくれると嬉しいわ」

取材・文●湯川泰佑輝（THE DIGEST編集部）

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