ラグビー

「自分たちの弱さも、手応えも感じた」ウェールズ戦、ロスタイムの逆転負けはなぜ起きたのか?【ラグビー日本代表】

向風見也

2025.11.17

主将を務めたディアンズが突破を図る。終了間際、日本は惜しくもウェールズに逆転を許した。(C) Getty Images

 代表戦で勝つのは難しい。

 ラグビー日本代表は現地時間11月15日、敵地カーディフのプリンシパリティスタジアムでウェールズ代表に挑んだ。

 23―21と2点リードでラストワンプレーを迎えながら、敵陣の深い位置から攻め込まれた。向こうにキックはないと見て前衛の守りを厚くし、フランカーのタイラー・ポール、フッカーの佐藤健次が接点へ圧をかける。それでも継続を断ち切れない。

 自陣に戻されたところで、レフリーのマシュー・カーリーがプレーを止める。ハーフ線付近右端で、この夜日本代表デビューのハリー・ホッキングスのタックルが危険と見なされた。チーム通算3枚目のイエローカードが出された。

 
 モールを組まれた。「ユーズイット!」。カーリーが、ボールを使えという意味で叫んだ。塊が2度止まったらボールを出さなければいけない決まりだからだ。

 ところがどうだ。ウェールズ代表は「ユーズイット!」の声に応じずそのままモールを押し、トライゾーンに近づいた。本来ならルール違反だろうが、プレーは続行された。

「僕はレフリーに『ユーズイット』って何回もアピールして…」と苦笑するのは、ジャパンでナンバーエイトをしたマキシ ファウルア。前半30分にハイタックルでイエローカードを食らいながら、復帰後の後半20分にトライ。最後までファイトしていた。

「(判定は)自分たちではコントロールできないところなので…。もう、身体張って止めるしかなかった」

 献身もむなしく、ここで日本代表は通算10個目の反則でペナルティーゴールを与えた。

 23―24。ロスタイムの逆転負けである。マキシはロッカー室に戻り、スーツに着替えてもうなだれたままだ。

「自分たちの規律(の乱れ)で相手にモメンタム(勢い)を持って行かれた。本当に悔しいです。言葉にできない」

 その通り、総じて判定に泣いた。

 ここに不満を述べたのはエディー・ジョーンズ。約9年ぶりに復帰して2シーズン目のベテラン指導者は、「文句言っているように聞こえるだろうが、文句を言っている」と切り出し、ラック周りの取り締まりの「一貫性」に苦言を呈した。

 あのクライマックスの場面で、身長208センチのホッキングスの相手の胸へのコンタクトがカード対象となったことへはジョークで応じた。

「ラグビーは15対15でやるべき。ワールドラグビー(国際統括団体)ももうしたいはず。もし自分がファンだったらウェールズ協会に金を返せと言うだろうが、同協会はそんなに金がない」

 それでもジャッジは覆らない。痛かったのは、流れを左右した軽微な反則だ。

 後半11、23分に与えたトライは、自分たちでスコアした直後のペナライズがきっかけだ。動き出す前の立ち位置、密集へのサポートのつき方を指摘された。

 攻守にインパクトを残したロックのワーナー・ディアンズ主将は、大観客のもとでの失敗をこう振り返った。

「何でうまくいかなかったか…ちょっとわからないです。(原因は)スタジアムの観客なのか、ゲームのプレッシャーなのか…。小さいコネクション(声のかけ合いや阿吽の呼吸)が切れたのかなって」
NEXT
PAGE
「チームとしてまとまっている。(同じ)方向性は見られている」