ファイターがどれだけの恐怖と闘っているのか。とりわけ引退試合で世界最高峰の強豪と対戦する時には…。そんなことを、あらためて感じた。
『ONE SAMURAI 1』(4月29日、有明アリーナ)で、昨年3月にKO負けを喫したロッタンへのリベンジ勝利でラストマッチを飾った武尊。2日後の引退会見で明かしたのは、試合後ほとんど眠れていないということだった。
「アドレナリンが出る量が過去一だったんじゃないですかね。いつも試合後は寝れないんですけど、今回は相手がロッタン選手で、ああいう内容だったので。
(試合は)全部が理想通り。できすぎた夢を見ているようで。毎日、試合の夢を見てうなされてたので、まだ(勝った)実感がないんです。ちょっとウトウトすると“まだ試合前なんじゃないか”となって。
前回すぐ倒された恐怖心もあって、何度も失神させられる夢、大ケガさせられる夢を見てました。その恐怖を克服するために頑張れたからこそ、過去最高のパフォーマンスと集中力が出せたんだと思います」
勝った瞬間も「勝ったの? チャンピオン?」と「プチパニック状態」だったそうだ。ロッタンとの再戦は恐怖との闘いでもあり、だからこそ集中力が高まった。実際、武尊は打ち合いながらもガードを下げていなかったし、頭の位置を変えながらパンチを放っている。大胆な打ち合いの中に、繊細な技術が徹底されていた。
34歳、肉体的にも若い頃とは違う。前回のロッタン戦の後、首のヘルニアに。それが引退を決めた理由の一つだった。
「人間は簡単には壊れないと思ってたけど、そうじゃない自分を知りました。でも、弱さを知ったことで強くなれた」
もう以前の自分の体とは違う。それを認めれば練習も変わってくる。長期の追い込み練習もコンディション重視、それが4度のダウンを奪ってのTKO勝利につながった。
首のヘルニアについては、妻の川口葵からの言葉も会見で語っている。
「“子供と遊べる体は残しておいてほしい”と言われました。あんまりよくない表現かもしれないですけど“もし試合で体が動かなくなっても、私が工事現場で働いてでも稼ぐから。最後まで悔いなくやり切って”と言ってくれて。嬉しかったし、この人と結婚してよかったと思いました」
引退試合の背景には、本当に多くのドラマがあった。引退会見は90分以上続いた。格闘家の単独の会見としては異例の長さで、それだけ武尊が質問に対して真摯に答えていたのだ。
今後の肩書きについては「無職でいいです」と笑う武尊。ありきたりではなく、武尊にしかできない仕事があるということでもあるのだろう。チャリティ活動も続けていくし、格闘技界を盛り上げるためにできることは何でもすると語った。引退セレモニーを行なう新興キックボクシングイベント『GOAT』運営会社の取締役に就任するが、といって「この団体にしか協力しないということはないです」と言う。
武尊自身、団体の壁に阻まれて那須川天心戦がなかなか実現しなかった。その那須川戦実現に向けても、中立のリングで行なうことにこだわった。どこかが得をするとか損をするということではいけないのだと。
そんな武尊だから、格闘技界全体が盛り上がることを重視するのだ。綺麗事のように思われるかもしれないが、武尊にはそれを言う資格がある。
取材・文●橋本宗洋
【画像】武尊、涙の引退会見…妻の川口葵さんと笑顔のツーショットも
【動画】武尊がロッタンから3度目のダウンを奪う!
【記事】武尊、現役ラストマッチ劇的勝利 “ボンビーガール妻”のたたずまいが脚光「チャラチャラせず、涙も見せず…」「格闘家の妻ならこうあってほしい」
『ONE SAMURAI 1』(4月29日、有明アリーナ)で、昨年3月にKO負けを喫したロッタンへのリベンジ勝利でラストマッチを飾った武尊。2日後の引退会見で明かしたのは、試合後ほとんど眠れていないということだった。
「アドレナリンが出る量が過去一だったんじゃないですかね。いつも試合後は寝れないんですけど、今回は相手がロッタン選手で、ああいう内容だったので。
(試合は)全部が理想通り。できすぎた夢を見ているようで。毎日、試合の夢を見てうなされてたので、まだ(勝った)実感がないんです。ちょっとウトウトすると“まだ試合前なんじゃないか”となって。
前回すぐ倒された恐怖心もあって、何度も失神させられる夢、大ケガさせられる夢を見てました。その恐怖を克服するために頑張れたからこそ、過去最高のパフォーマンスと集中力が出せたんだと思います」
勝った瞬間も「勝ったの? チャンピオン?」と「プチパニック状態」だったそうだ。ロッタンとの再戦は恐怖との闘いでもあり、だからこそ集中力が高まった。実際、武尊は打ち合いながらもガードを下げていなかったし、頭の位置を変えながらパンチを放っている。大胆な打ち合いの中に、繊細な技術が徹底されていた。
34歳、肉体的にも若い頃とは違う。前回のロッタン戦の後、首のヘルニアに。それが引退を決めた理由の一つだった。
「人間は簡単には壊れないと思ってたけど、そうじゃない自分を知りました。でも、弱さを知ったことで強くなれた」
もう以前の自分の体とは違う。それを認めれば練習も変わってくる。長期の追い込み練習もコンディション重視、それが4度のダウンを奪ってのTKO勝利につながった。
首のヘルニアについては、妻の川口葵からの言葉も会見で語っている。
「“子供と遊べる体は残しておいてほしい”と言われました。あんまりよくない表現かもしれないですけど“もし試合で体が動かなくなっても、私が工事現場で働いてでも稼ぐから。最後まで悔いなくやり切って”と言ってくれて。嬉しかったし、この人と結婚してよかったと思いました」
引退試合の背景には、本当に多くのドラマがあった。引退会見は90分以上続いた。格闘家の単独の会見としては異例の長さで、それだけ武尊が質問に対して真摯に答えていたのだ。
今後の肩書きについては「無職でいいです」と笑う武尊。ありきたりではなく、武尊にしかできない仕事があるということでもあるのだろう。チャリティ活動も続けていくし、格闘技界を盛り上げるためにできることは何でもすると語った。引退セレモニーを行なう新興キックボクシングイベント『GOAT』運営会社の取締役に就任するが、といって「この団体にしか協力しないということはないです」と言う。
武尊自身、団体の壁に阻まれて那須川天心戦がなかなか実現しなかった。その那須川戦実現に向けても、中立のリングで行なうことにこだわった。どこかが得をするとか損をするということではいけないのだと。
そんな武尊だから、格闘技界全体が盛り上がることを重視するのだ。綺麗事のように思われるかもしれないが、武尊にはそれを言う資格がある。
取材・文●橋本宗洋
【画像】武尊、涙の引退会見…妻の川口葵さんと笑顔のツーショットも
【動画】武尊がロッタンから3度目のダウンを奪う!
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