ゴルフ

「下剋上」で道を開いた原英莉花。師匠・ジャンボ尾崎が設定する、さらなる飛躍の条件は…【黄金世代の歩み】

山西英希

2020.06.03

原の今季の目標は、早い段階でのツアー2勝目と賞金ランキング5位以内だ。(C)Getty Images

 昨年のリゾートトラストレディスで念願のツアー初優勝を飾った原英莉花。賞金ランキングでも自己最高の14位となり、今年はさらなる飛躍が期待される。原といえば、何といっても身長173センチの長身から繰り出される豪快なドライバーショットが魅力だろう。トーナメント会場では思わず「オオーッ……」というため息にも似た驚きの声を漏らすギャラリーも少なくない。実際、昨年のドライビングディスタンスでは253・33ヤードを記録して4位に入っている。しかし、その力強いドライバーショットを一朝一夕で身につけたわけではなかった。

 原が師匠であるジャンボ尾崎の門を叩いたのは高1の冬だ。基本的に女子には関心のなかったジャンボだが、原のショットをひと目見て何かを感じたのだろう。原から「またお邪魔してもいいですか?」と聞かれると、「いつでも来ていいぞ」と事実上の弟子入りを認めた。以来、毎週日曜日と夏休みなどの長期休暇があると、練習施設の整ったジャンボ邸に通うようになった。
 
 当初、原のスイングは上体の捻転が浅く、体重移動も小さかった。インパクトでボールにクラブフェースを合わせるような打ち方だったため、ボールにパワーが伝わり切らず、球質も軽かった。それを180度変える作業が始まったのだ。30メートルぐらいあるバンカーの中でタイヤを引いてのダッシュを何本も繰り返すなど、下半身強化はもちろん、ソフトボールを短いクラブで打つ練習などで体重移動やダウンスイングのタメを身につけていった。それほど運動が得意ではなかった原にしてみれば苦しい日々だったろうが、成果は徐々に現れていた。高3のときに出場したリゾートトラストレディスで16位タイとなり、初めてのベストアマを獲得する。

"ジャンボの弟子"として、メディアからも注目され始めたが、高校卒業後に初めて受験したプロテストに失敗すると、ツアー出場権をかけた最終予選会にも進むことができず、18年のツアー出場順位は118位に。多くの期待を裏切る形になったものの、ただでは転ばないのが原の長所でもある。トーナメントの週に行われる主催者推薦選考会で上位に入ったり、推薦出場などで前半戦は8試合に出場。着実に賞金を加算していき、年2回ある最初のリランキングで28位にまで順位を上げたことで後半戦の出場権を獲得。最終的に賞金ランキング38位となり、初シードを獲得したのだ。まさにゴルフ版下剋上ともいえるが、地力があることを改めて証明して見せた。