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モータースポーツ

「いつまでも祥也のことを覚えている…」MotoGP中上貴晶が亡き親友の富沢祥也にミサノでの初表彰台を誓う

甘利隆

2020.09.16

ミサノでポケバイ時代からのライバル富沢の事故現場で手を合わせ、初表彰台を誓った中上。(C)Getty Images

ミサノでポケバイ時代からのライバル富沢の事故現場で手を合わせ、初表彰台を誓った中上。(C)Getty Images

「いつも見守ってくれてありがとう! 早く表彰台に上がらないとそろそろ怒られるな。またレース後に行くね」

 MotoGP第7戦サンマリノGPの初日、中上貴晶(LCRホンダ・出光)は、自らのTwitterにこう書き込んだ。彼が画像の中で手を合わせ、祈りを捧げているその場所は、ちょうど10年前にレース中のアクシデントでこの世を去った、富沢祥也がクラッシュしたコーナー近くのガードレール。第6戦スティリアGPでほぼ手中に収めていた2位表彰台を逃した28歳の侍ライダーは、ポケバイ時代からのライバルであり、親友でもあった富沢に誓いを立てていたのだ。レースウィークに日本人ライダーたちがそこに赴き、花を供えて故人を弔うのは、毎年恒例となっており、明るい性格で多く人から愛された富沢を偲んで、ガードレールにはたくさんのステッカーが貼られている。

 レースが開催されるミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリは、Moto2時代にこれまで3度表彰台に上がる等、相性が良い。現地を訪れていた富沢の家族に「祥也に優勝を贈れなくてごめん…」と話し、悔しさを分かち合ったこともあるコースだ。それだけに懸ける意気込みも強かったのだろう。

 この投稿を見た2人の関係を知る世界中のファンからは「タカ、ショーヤのために勝って!」「素敵な言葉ですね。私たちはいつまでもショーヤのことを覚えています」「ピエールとアントワーヌのようになれます。ガスリーはモンツァで勝ちました(先日のF1イタリアGPでピエール・ガスリーは親友の故アントワーヌ・ユベールに捧げる優勝を果たした)」とエールが届けられた。
 
 だが、舗装し直された路面は、以前よりグリップするようにはなったものの、バンプがひどく、多くのライダーが苦しめられた。中上もその1人で「マシンが大きく振られ、ホールドするだけでも大変」という状況で、フリー走行では総合13番手と上位10名のみがそのまま進出できる予選Q2に進めず、11位以下のライダーによって争われる予選Q1でも再度Q2進出可能な上位2名には入れなかった。
 
 それでもホンダ勢トップの予選14番手からスタートした中上は、新たに投入されたホールショットデバイスの効果もあってか、オープニングラップで11位にジャンプアップ。その後もヨハン・ザルコ(レアーレ・アビンティア・レーシング・ドゥカティ)、ジャック・ミラー(プラマック・レーシング・ドゥカティ)をパス。ファイナルラップのトラックリミット(コースアウト)によるペナルティーで1つ順位を下げ、9位となったが、シングルフィニッシュでレースをまとめた。

 続く第8戦エミリア・ロマーニャGPもミサノでの開催で、2位を快走したスティリアGPも同一コースでの2戦目だっただけに可能性は十分だ。決勝朝のウォームアップでトップタイムを記録する等、セットアップも前進しており、次こそはMotoGPクラスで自身初、“祥也に捧げる”表彰台の獲得が期待される。

文●甘利隆
著者プロフィール/東京造形大学デザイン科卒業。都内デザイン事務所、『サイクルサウンズ』編集部、広告代理店等を経てフリーランス。Twitter:ama_super

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