マラソン・駅伝

【箱根駅伝 名場面5選】歴史に残る快走をもう一度!佐藤悠基、相澤晃らの大記録を振り返る

佐藤俊

2020.12.31

正月の風物詩、箱根駅伝。今回はこれまでの名場面を振り返る。写真:日刊スポーツ/朝日新聞社

★1区、異次元の走り・佐藤悠基(東海大)
 第83回大会、2年生ながら東海大のエースだった佐藤は大方の予想を覆して1区で登場。最初の2キロで、すでに2位以下に250mもの差をつけて独走。13キロ付近で脚がけいれんするアクシデントが起こり、止まりそうになりながらも快走をつづけた。2位に4分1秒もの大差をつけ、94年大会で渡辺康幸(早大)が出した区間記録を7秒も更新(1時間1分6秒)し、金栗四三杯を受賞した。この大記録は、今も破られていない。

★三代目、山の神・神野大地(青学大)誕生
 三代目山の神は、第91回大会、青学大の箱根駅伝初優勝時に誕生した。前を行く駒大をテンポの良いリズムとウサギが飛び跳ねるような軽い走りでアッという間に追い抜いていった。当時は今よりも3キロほど長い23.1キロを76分15秒という驚異的なタイムで走り抜き、往路優勝を実現。この快走で神野は今井正人、柏原竜二につづいて「山の神」といわれるようになった。神野に続く4代目は、まだ生まれていない。

★設楽兄弟(東洋大)、服部兄弟(東洋大)が優勝タッグ
 第90回大会で優勝した東洋大は、圧倒的な強さを見せたが、とりわけ強さを見せたのがアベック兄弟だった。設楽の兄・啓太は5区、弟・悠太は3区、服部の兄・勇馬が2区、弟・弾馬は7区を走り、勇馬の区間3位以外は全員が区間賞を獲った。兄弟で異なる大学で活躍する選手は多いが、2組の兄弟が集まって力を合わせての優勝は、この時しかない。東洋大は、往路、復路を制する完全優勝を実現した。
 
★相澤晃(東洋大)の2区区間新を生んだ好敵手
 第96回大会の2区、相澤が区間新を出したが、このタイムの背景には伊藤達彦(東京国際大)の存在があった。前を行く伊藤に相澤が追いつくと、そこから二人は並走し、抜きつ抜かれつのドッグファイトを演じた。その攻防は見ごたえ十分で相澤のタイムは65分57秒と破格の区間新。社会人になった相澤は今年、日本選手権1万mで優勝し、東京五輪男子1万mの代表の内定を獲得。この時も優勝を競ったのは、伊藤だった。

★小松陽平(東海大)が見せた勝利の駆け引き
 第95回大会、東海大が初優勝したが、8区の小松が見せた駆け引きは見事だった。小松は鈴木宗孝(東洋大)に追いつくと、背後につき、時々前に出て相手の表情を見て、プレッシャーをかけた。そうしてメンタルを削られた鈴木は徐々に疲弊していく。小松は相手のキツそうな表情や荒い呼吸を聞き、遊行寺の坂でスパートをかけて一気に突き放した。見事な駆け引きで1時間3分49秒と22年ぶりに区間記録を更新し、金栗四三杯を受賞した。

取材・文●佐藤俊(スポーツライター)