格闘技・プロレス

井上尚弥の“次戦の有力候補”ダスマリナスはどんなボクサー?左のパワーは魅力だが、カシメロのような怖さは…

杉浦大介

2021.02.22

昨年10月のラスベガスデビュー戦では7ラウンドKO勝ちを収めた井上。次戦はダスマリナスとの指名戦が濃厚となっている。(C)Getty Images

 日本が誇る世界最高級のボクサー、WBAスーパー、IBF世界バンタム級王者・井上尚弥(大橋)の次戦はIBF1位マイケル・ダスマリナス(フィリピン)との指名戦に落ち着きそうだ。

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 本来なら他団体王者との統一戦路線を邁進したいところだろうが、依然としてパンデミック下の現状では特に軽量級のビッグファイト挙行は容易ではない。また、IBFは他の世界タイトル統括団体と比べてルールが厳格であり、同団体の王者が指名戦期限を過ぎた際、本来は統一戦以外の防衛戦を認めていない。

 井上の場合、もともとのIBF指名戦期限は2019年7月5日だったが、ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズに参戦していたため、昨年3月15日に延期。さらに世界中が新型コロナウイルスの猛威に苦しんでいたことも考慮され、井上のアメリカでのプロモーターであるトップランクがダスマリナスに2万ドルの待ち料を払った上で昨年10月31日のジェイソン・マロニー(オーストラリア)との選択防衛戦が認められた経緯がある。
 
 ただ、ダスマリナスのプロモーター、MPプロモーションズのショーン・ギボンズはここに来て「マイケルと戦うか、さもなくばタイトルを返上してもらう」と明言。指名戦をこれ以上、先延ばしにするつもりはないようだ。だとすれば、井上対ダスマリナス戦は2021年上半期に行なわれることになるだろう。

"モンスター"のリング登場が待ち遠しいのは事実としても、井上対ダスマリナスは激戦が期待できる一戦ではないことは断っておきたい。28歳のフィリピン人サウスポーはこれまで30勝(20KO)2敗1分という立派な戦績だが、一線級相手の勝ち星はほとんど皆無。あえていうなら2018年4月に当時WBC4位だったカリム・グエルフィ(フランス)を4回KOした勝利が光るが、その次のマニョ・プランジ(ガーナ)戦では大苦戦を味わい、微妙な判定でのドローに終わっている。

 上下の打ち分けと左パンチのパワーに魅力はあるものの、やや正直すぎるきらいがあり、同じMPプロモーションズ傘下のWBO王者ジョンリエル・カシメロ(フィリピン)のような怖さはない。スパーリングパートナーとして何度も来日も果たしており、ミステリアスな趣きがある選手でもない。