マラソン・駅伝

【瀬古利彦】印象的だった大迫傑の6位入賞。彼はやりきったのかな? まだ走りを見たいね

永野祐吏(THE DIGEST編集部)

2021.08.10

大迫傑の走りを85点と評価した瀬古利彦氏。写真:塚本凜平(THE DIGEST写真部)

 17日間に渡って行なわれた東京五輪が8月8日閉幕。陸上競技のフィナーレを飾るべく最終日には男子マラソンが行なわれ、大迫傑が6位入賞と健闘を見せた。日本陸上競技連盟のマラソン強化・戦略プロジェクトリーダーの瀬古利彦氏にその活躍について振り返ってもらった。

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 今回印象的だったのは、やっぱり大迫傑選手かな。6位入賞で日本男子マラソンの面目を保ってくれた。本人的には100点かもしれないけど、金メダルが100点だから、リーダーの私としては85点だったかな。

 実は、3週間ほど前に大迫選手から「調子が良いので皆さんの期待に応えられるような走りをします」と連絡をもらっていたのと、彼が配信するYouTubeで練習の走りを見たら、調子が良さそうだったので、何かやってくれるだろうなとは思っていた。

 レース前半は、無駄な動きを全くしていなかった。先頭集団の少し後ろの位置を保っていたので、落ち着いて走っているなと見ていた。

 途中で遅れたけど、35キロ辺りでメダル争いをする2位集団の背中が見えてきた時は、さすが大迫選手だと興奮した。もう少し頑張ったら、集団に追いつけるのではないかと思わせてくれる走りだった。

 だけど2位集団の選手たちは、4人だったので上手く体力を温存しながらメダル争いをしていた。大迫選手は前を1人で追わないといけなかったので、そこで力を使ってしまったね。早い段階で追いついて、ラスト5キロを集団で行けていたら、結果は違ったかもしれない。

 最後のレースと言っているみたいだけど、本人はやりきったのかな?はっきり引退とは言っていないし、まだ大迫選手の走りを見たい。彼の走る姿は後輩たちの勉強になるし、引退はちょっと寂しいな。次のオリンピックまであと3年。まだやれるんじゃないの?
 
 今大会はMGCで選ばれた2人はたまたま思うような走りができなかった。言い訳させてもらえれば、1年の延期の影響は大きかった。中村選手と服部選手はこの2年間ずっと代表としてのプレッシャーを受け続けていたからね。

 でもMGCは間違っていないと思ってる。日本男子マラソンの選手層は、リオ大会時より厚くなったのは事実。マラソンの世界歴代100傑を見るとケニア選手とエチオピア選手が88人いるんだけど、今大会エチオピアの入賞ゼロだし、ケニアもメダルは1つだった。マラソンでメダル獲るのがいかに大変な事かが分かる。日本は100傑には大迫選手と鈴木健吾選手の2人のみ。その中でメダルを狙うのは、本当に大変な事だと思う。だから日本は選手層をもっと厚くするのが課題だと思っている。

取材・文●山本祐吏(THE DIGEST編集部)

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