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格闘技・プロレス

異例のUWFルールを実現させたスターダム。UFCも闘った朱里が披露した“魅せるプロレス”と「魂」の充実ぶり

橋本宗洋

2021.11.29

小波と激しく、“らしい”攻防を繰り広げた朱里。赤いベルトへの挑戦権を賭けた争いは大会を大いに盛り上げた。写真:徳原隆元

小波と激しく、“らしい”攻防を繰り広げた朱里。赤いベルトへの挑戦権を賭けた争いは大会を大いに盛り上げた。写真:徳原隆元

 いよいよ最終決戦だ。スターダム年内最後の大一番、12.29両国国技館大会でのワールド・オブ・スターダム選手権試合は、林下詩美と朱里によって争われることになった。
【動画】異例のUWFルール! 朱里と小波が繰り広げた熱き闘いをチェック

 今年6月の大田区総合体育館大会で対戦した両者は、30分時間切れ引き分けの末に行なわれた延長再試合も互いKOでドロー。昨年のリーグ戦でも時間切れで引き分けていたため、トータル1時間以上も闘って決着がついていない。いわば両国国技館大会での時間無制限による決着戦は2人の「約束」だった。

 王者の林下は6月の朱里戦後もタイトル防衛を重ね、11月27日のビッグマッチ、国立代々木競技場第二体育館大会では舞華を破ってV9を達成。一方、朱里も5★STAR GPを制して手に入れた挑戦権利証を守ってきた。

 そして迎えた11.27国立代々木競技場第二体育館での挑戦権利証マッチ&SWA世界選手権で朱里は小波と対戦した。スターダム入りする前、REINAに所属していた時代もある2人は師弟関係と言ってもいい。

 パンクラス王者となり、UFCにも参戦した経験を持つ朱里だけでなく、小波もグラウンドを得意としており、この試合は異例のUWFルールで行なわれた。ダウン、ロープエスケープは減点となり、5失点で負けとなる同ルールは、お互いの持ち味が濃厚に出る形式だった。ロープに飛ばず、場外戦もない。ただ、朱里は足4の字固めやサソリ固めも繰り出し、いわゆる“格闘プロレス”らしさを全面的に展開したわけではなかった。

 格闘技の技術もベースにする朱里は、プロレスとはジャンルとして明確に分けて闘っている。そのうえで「どちらも面白いしどちらも難しい」と語る。それだけにプロレスはプロレスであって、UWFルールもそのひとつという彼女のスタンスが見える試合でもあった。4の字、サソリ固めは、むしろ『新日本プロレスvsUWFインターナショナル対抗戦』で、新日本側の武藤敬司、長州力が出した“U殺し”の技でもある。
 
 いつもとコスチュームを変えて“UWF仕様”で臨んだ小波が立て続けにポイントを奪い、残り1ポイントまで追い込まれた朱里。だが、そこから厳しい角度での水車落とし、ハイキック、ヒザ、そしてバズソーキックでたたみかけてKO勝ちを収めた。蹴りの打ち合いなど、この2人ならではの攻防だったのは間違いない。

 プロレスラーとしての“魅せる”センスも出しつつ、朱里はいつもとは違うルールの闘いでファイターとしての芯の太さのようなものを見せつけた。殴る蹴る、投げる、関節を極める――。そうしたシンプルな闘いだったからこそ、小手先ではない実力が光ったと言えるだろう。

「小波と朱里でスターダムに新しい風を吹かせる。その1日目。私にとって特別な日になりました」

 朱里は試合後にそう語った。
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