格闘技・プロレス

今も色褪せない“伝説の世界一決定戦”。英メディアが46年前のアリvs猪木に再脚光!「世界チャンプは日本で足を失いかけた」

THE DIGEST編集部

2022.01.13

鋭く、力強い蹴りを見舞う猪木。さまざまな制約の“穴”を突いた攻撃はアリを苦しめた。(C)Getty Images

 格闘技史、いやスポーツ史に語り継がれる一戦がふたたび脚光を浴びている。1976年6月26日に開催されたアントニオ猪木vsモハメド・アリの「格闘技世界一決定戦」を、英スポーツ専門ラジオ局『talkSPORT』が振り返っている。
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 まさしく伝説の異種格闘技戦だった。当時のWBA・WBC統一世界ヘビー級チャンピオンだったアリと日本プロレス界のヒーローだった猪木の両雄のマッチアップは、"世紀の一戦"といわれ、日本だけでなく世界中に衛星生中継されるほどの注目度を集めた。

 試合はアリが挑発を続け、猪木が「リアルファイトだ。OK?」とヒートアップした戦前の盛り上がりとは裏腹の内容だった。終始、後者が寝ながら前者の足を狙った闘いを見せ、大きな見せ場がなかったのだ。そのため試合後に当時のメディアは「世紀の凡戦」「世界的な茶番劇」と揶揄した。

 ただ、のちにアリ側からレスリングの技やヘッドバットやチョップなど多くの禁止事項を設けられていたことが判明。試合後に皮肉的な意味で使われた「猪木-アリ状態」が、制約だらけのルールの中で見出した苦肉の策だったと判明し、とりわけ猪木への評価は改められるようなった。
 
 プロボクシングのヘビー級現役世界王者がプロレスのリングに上がった異例の対戦から46年。試合について「伝説的なプロレスラーであるイノキの攻撃を受け、世界チャンピオンのアリは日本で足を失いかけた」とクローズアップした『talkSPORT』は、「アリは来日後もイノキが本気で闘いの準備をしていると知らずにいたため、リハーサルでの日本人の動きを見た時にルールをぐちゃぐちゃにしなければいけないと感じた」と、その異例ぶりを伝えた。

 また、世界的なボクサーに対する特異な戦法であった猪木の"アリキック"については、「アリはあまりの退屈さにブーイングに包まれた会場と同様にイノキに腹を立て、『起き上がれ!』と叫んだ。だが、5回が終わるころには彼の足は血まみれになっていた」と強調する。ちなみに猪木戦から5年後にアリは現役引退を決意するのだが、その理由のひとつが猪木の蹴りによる影響だとも言われている。

 猪木の蹴り技によるダメージについて「当初、アリは楽に金儲けができると考えていたが、イノキ戦の代償は大きかった」とした同メディアは、プロモーターを務めたボブ・アラム(現トップランク社CEO)のコメントを紹介している。

「最悪だった。アリは恥ずかしながら足から酷い出血をし、感染症みたいな状態になり、もう少しで切断しなければいけないぐらいの深手を負った。そうなっていたら彼は残りの人生で、より不自由な生活を余儀なくされていたかもしれない」

 ドロー決着で勝者がいたわけではない。しかしながら、格闘界の二大巨頭が競技の垣根を越えて激突した試合は、今もなお色褪せてはいないと言えそうだ。

構成●THE DIGEST編集部
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