中国・北京で開催中の冬季オリンピック、フィギュアスケート男子シングル・フリーで、前人未到の４回転半ジャンプ（４A）に果敢に挑戦した日本代表の羽生結弦にイタリア国営放送の解説者が大きな賛辞とエールを送った。

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　フィギュアスケート人気の高いイタリアは、今回の北京五輪でダニエル・グラッスルとマッテオ・リッツォの２選手が進出したフリー決勝を国営放送が生中継。なかでも、解説者の力がこもったコメントが印象的だったのが羽生の演技だった。

　スケート競技に精通し、氷のジャーナリストと呼ばれるフランカ・ビアンコーニ氏は、羽生が氷上に姿を現すと、「世界最高のスケーター、ユズル・ハニュウの夢を追うパフォーマンスが始まります」と緊張を抑えて第一声を発した。

　冒頭注目の４Aで「挑みましたね」と感慨深く言葉を発したのは、イタリア代表ペアとして現役時代にソチ五輪を始め多くの国際大会に出場したオンドレイ・ホタレック氏。2017年10月に開催されたGPシリーズ・ロシア大会エキシビションでの記念撮影で、テープが足に絡まり遅れて最後列になった羽生を抱え上げた人物だ。惜しくも転倒となった羽生の挑戦に、「あとほんの少しだった」と悔しさを滲ませてコメントした。
  　続く４回転サルコーでは、予想外だった転倒の瞬間に、「ノ――！！」とビアンコーニ氏が絶叫。それでも、ジャンプをすべて成功させた後半の滑りに、「ハニュウが持つ美のクォリティは誰も踏み込めない領域」と絶賛した。

　ホタレック氏は、「ハニュウはメダルを越えた戦いに挑んでいる」、「４Aは僕がこれまで見たなかで１番回転できていた。確実に成功へ近づいている。近い将来に必ず成し遂げる。あとは時間を待つだけ。それを確信させられた」と熱くコメント。その言葉通り、渾身の４回転半は国際スケート連盟（ＩＳＵ）公認大会で史上初めて認定され、回転不足ではあったものの採点表に世界で初めて４Aの文字を刻む偉業を果たした。

　演技を終え、両手で氷を握りしめてリンクへ感謝を伝えた羽生。競技へのリスペクトを忘れないその姿に有識者たちも感動を隠せない様子だった。ホタレック氏は最後に、異次元のジャンプに最も近い場所にたどり着いた27歳へ、「４回転半成功を成し遂げて伝説を見せてほしい」と期待を込めて心からのエールを送った。

　メダルを超える戦いに挑んだ五輪。羽生が疲れを癒して氷上へ戻ってくるのを楽しみに待ちたい。

構成●THE DIGEST編集部

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