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沈黙した米解説者たちの「Thank God」。“渦中”のワリエワへ寄せた想い「周囲の大人に腹が立つ」【北京五輪】

THE DIGEST編集部

2022.02.18

演技前から浮かない表情を浮かべたワリエワ。この15歳の演技に世界が注目した。(C)Getty Images

「Thank God(ありがとう)」

 2月17日、北京五輪のフィギュアスケート女子シングルフリースケーティング(FS)の最終滑走者として出たカミラ・ワリエワ(ロシアオリンピック委員)の演技を見終えた米放送局『NBC Sports』の解説者であるジョニー・ウィアーは、そうつぶやいた。
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 ドーピング騒動の渦中にある15歳は2日前のショートプログラムで82・16点を記録。堂々の首位に立っていたが、この日はことごとく精彩を欠いた。冒頭で4回転サルコーこそ着氷したものの、その後は得意のジャンプで信じられないようなミスを連発。いつもの覇気を失ったまま、涙を浮かべながらリンクを後にした。

 結果は最悪だ。141・93点の合計224・09点で4位と、金メダルを期待された少女は、表彰台からも転落したのである。もっとも、控室で号泣した彼女が、まともな精神状態にはなかったのは、想像するにたやすい。今月8日に禁止薬物の陽性が出ていたことが明るみになると、文字通り世界中から非難されたのだ。

 それだけに壮大なプレッシャーに苛まれた15歳に「Thank God」と言い放ったウィアーの言葉は重い。15日のショートプログラムで解説を務めた際には、演技中にほぼ沈黙し、数える程しかコメントしなかった元米五輪代表スケーターは、ロシアの偉才について、こう説いた。

「僕はフリースケーティングでこんなにもミスを犯すカミラを見たことがない。人間として、彼女が経験したことは想像もつかない。だからといって、彼女がこの大会に出るべきでなかったという事実は変わらない」
 
 一方でウィアーとともに『NBC Sports』で解説を行なっていた1998年の長野五輪の金メダリストであるタラ・リンピスキーは「腹立たしい」とワリエワの周囲に対する怒りを滲ませた。

「私もカミラがどれほどつらい経験をしたかは想像できない。彼女の周りに居たはずの大人がもっと適切な判断を下し、導くべきだった。それにもかかわらず、重要な時に近くにいなかったことに腹が立つ。こうなったのはその結果だと思います。彼女はまだ15歳の少女です。こんな目に遭うのは公平じゃない。繰り返しになりますが、私も彼女が、このオリンピック種目で滑ることを許されるべきではなかったと言いたいです」

 世界を騒然とさせた今大会のワリエワ。彼女が作ってしまった波紋は、まだまだ収まりそうにない。

構成●THE DIGEST編集部

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