ROC（ロシア・オリンピック委員会）のフィギュアスケート界が風雲急を告げている。

　大会中に取り沙汰されたカミラ・ワリエワへのドーピング疑惑に端を発し、コーチであるエテリ・トゥトベリーゼ氏の指導方法への批判など、さまざまな情報や憶測が交錯している。最終的にワリエワは４位に終わったものの、アンナ・シェルバコワが金メダル、アレクサンドラ・トゥルソワが銀メダルを獲得して、なんとか面目を保った格好だ。

　しかしながら、トゥトベリーゼ氏が演技を終えたばかりで失意のワリエワに「なぜ諦めたの？ 説明しなさい！」と詰問すれば、泣きじゃくるトゥルソワがその恩師の抱擁を拒否し、「あなたは知っていた、知っていた！」「セレモニーには行かない！ 私は参加しない」とまくし立て、競技から離れる意向までちらつかせるなど、新たな波紋を広げている。

　そんななか、2014年ソチ五輪の金メダリストであるアデリナ・ソトニコワさんがインスタグラムを更新し、３人のロシア代表選手に賛辞を贈った。そのなかで渦中のトゥルソワに向けたワンフレーズが一部のファンを刺激してしまったと、ロシア・メディア『championat.com』が報じている。

　25歳の元五輪女王はまず、「サーシャ（トゥルソワの愛称）におめでとうと言いたい。あなたのジャンプはまるで宇宙にまっしぐらに離陸するロケットのようだったわ。あんなにたくさんの４回転を決められるのは、歴史上あなただけよ」とそのパフォーマンスを絶賛。そのうえで、「すべてはこれからよ。すべては始まったばかりなのよ。許されるなら、あなたたち全員に金メダルをあげたいけれども……」と続けた。

　引っ掛かったのは締めの文言だった。「でもね、これはスポーツなのよ。あなたは現実をありのままに受け入れなさい。そして競技を続けていって……」と綴り、納得が行かずにパニックを起こしたトゥルソワにエールを贈ったのだ。
 
　これに対して、トゥルソワに同情的な考えを持つ複数のファンが反論。そのひとつに「じゃああなたはトゥルソワのように跳べるの？　どうして『ありのままを受け入れろ』なんて言えるんだ！」との書き込みがあり、これを見たソトニコワさんがみずから返答する事態となった。

　ソトニコワさんは「なによりも、サーシャがフリープログラムで１位だったことを忘れないようにしましょう」と呼びかけ、「いいえ、私は（跳び方が）分かりません。ずいぶん前に競技生活を終えていますので。お願いですから、いま起こっていることと私を比較しないでください」と返答した。

　激励のつもりで綴ったメッセージだったが、思いもよらぬ形で非難の対象となってしまったようだ。

　ソトニコワさんは18歳で頂点に立ったソチ五輪後、怪我などもあって結果もパフォーマンスも安定せず。徐々に第一線から姿を消すと、2020年３月に23歳での現役引退を表明した。

構成●THE DIGEST編集部

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