バレーボール

「3度、お断りした」川合俊一氏がバレーボール協会の新会長となった決断の舞台裏「内情を聞けば聞くほどやる人はいない」

北野正樹

2022.03.23

日本バレーボール協会の新会長となった川合氏。会見では業界をふたたび盛り上げるためのプランを打ち出している。※写真はJVA提供

 3月22日、日本バレーボール協会(JVA)の新しい会長に、日本ビーチバレーボール連盟(JBV)会長で、タレントの川合俊一氏が就任した。19日の評議員会で会長候補の理事に選出され、東京都内での臨時理事会で理事による互選で正式決定した。

 就任に際して、川合新会長は、「日本バレーボール協会の将来がかかる極めて重要なタイミングで声を掛けていただき、これ以上なく、身の引き締まる思いがしている。不退転の覚悟を持って、協会を立て直すべく、職務に当たってまいりたい」とコメントを発表。ビーチバレー国際大会のキャンセルを巡る診断書偽造を知りながら、隠ぺいに関与した嶋岡健治会長(当時)や事務局長(同)が辞職に追い込まれた不祥事を念頭に、JVAの立て直しに向け、「ガバナンスの高度化」「国際競争力の強化」「発信力の強化」の3つの柱を掲げた。

 会見後のオンライン取材で、川合会長は「バレーが、ビーチバレーが大好きで、海外の強豪に勝つと一日楽しかった。会長職に就いて、単に楽しんでいるわけにはいかないので、寂しい部分もある。たくさんの方の期待を背負ったので、会長職をしっかりと遂行したい」と挨拶。また、「JVAの信頼は地に落ちたと思う。一度失った信頼を回復するのは半年、1年では無理。優秀な事務局職員の力が発揮できない状況がある。若い人の力とベテランの経験も活かせば、必ずいい協会になるのは間違いない。力を出させ、一致団結させるのが私の役割」と、改革の必要性も強調した。

 もっとも、難航の末に決まった会長人事だったようだ。

 会長代行を務めた河本宏子JVA副会長によれば、「新体制検討委員会」は、会社経営者やアスリートら20人を候補者としてリストアップ。そこから14人に絞り、そのうえで「トップとしての資質や、組織をよくしたいという情熱、決断力、改革意識などを点数化。企業のなかでコンプライアンスやガバナンスを体感、実感し強く自分のものにされている点が大きかった。バレー界やバレーを熟知されている」と、川合氏を選んだ。関係者によると、「約10項目で、川合氏がトップの評価点を挙げた」という。

 しかし、川合会長は「3度、お断りした」と告白。「周囲から『火中の栗を拾うようなもの』とも言われ、泥船に乗ったらひっくり返るから無理だとも思った。しかし、内情を聞けば聞くほど、やる人はいない。私でもやれることがあるのかなと考えた」と話すように、熟慮の末の決断だった。

 そんな川合会長が、就任会見で示したのは、日本で開かれる国際大会減少に対する危機感だった。それだけに「どうなるんだろうと、心配するファンの方も少なくない。国際連盟(FIVB)と話をしながら、昔のように毎年、日本で大きな大会が開催できるように努力する」と、地位向上に向けて意気込んでいる。

 国際大会の誘致、そして成功は、財政面や強化・普及にも直結するだけに、喫緊の課題だ。現状について川合会長は「(ガバナンスの高度化、法令遵守体制と内部統制体制の確立と並んで)一番にやっていかなくてはいけない問題」との認識を示し、「ざっくばらんな立場で関係を結んでいる人は、今のJVAにいないようなので、外部にいい人がいれば声を掛けたい」と、外部から人材登用する考えを明かした。

 JVA理事経験者らバレー関係者によれば、FIVBと大会開催などを巡る交渉を務めた経験のあるメディア出身者を、近く招へいするという。
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自らテレビ出演やメディアとの関係構築にも重き