格闘技・プロレス

勢いが止まらないスターダムで王座にいる価値。ジュリアとの激闘など両国を彩った朱里の“偉業”「私は突き進む」

橋本宗洋

2022.03.28

両者の表情が物語るように文字通りの激闘となった初日のメインマッチ。朱里は、袂を分かったジュリアから劇的な白星を掴んだ。写真:徳原隆元

 快挙、あるいは偉業と言っていいかもしれない。

 女子プロレス団体「スターダム」は、女子プロレス初の試みとなる両国国技館大会2連戦を開催(3月26日、27日)。両日とも、メインイベントは"赤いベルト"ワールド・オブ・スターダムのタイトルマッチとなった。
【動画】岩谷に炸裂した「流炎」! 朱里が両国を沸かせた渾身技をチェック

 チャンピオンの朱里は、昨年12月に同じく両国国技館で林下詩美からベルトを奪取。2度目となった今大会初日の防衛戦は、必殺技「朱世界」でジュリアを撃破。続く2日目には、岩谷麻優にオリジナルの関節技「白虎」を決め、連続防衛を果たした。

 両国国技館という大会場で2日連続のメイン、しかもタイトルマッチを制した。なおかつ、勝った相手はジュリアと岩谷である。林下、ジュリア、岩谷は過去3年間の女子プロレス大賞受賞者。つまり現代の女子プロレス界を代表する選手たちであり、朱里はそんな猛者たちを打ち破ったのである。

 今回の2連勝は、朱里にとって「女子プロレス界を背負って立つ」レスラーとしての自覚と自信を与えるものになった。女子プロレスラーとして、過去に誰も成し遂げていない勲章を手にしたと言っていい。林下戦から数えると、朱里は両国国技館3大会連続でメインイベントに勝利し、見事に締めた。

 ジュリア戦の時間は26分54秒。岩谷戦は28分57秒。2日合わせて55分を超える激闘だった。大一番の連続、にもかかわらずフィニッシュが違うというのは朱里らしい。必殺技がひとつだけでは、当然、"打つ手なし"になってしまう。だが、彼女はそうならなかった。

 実際、岩谷には朱世界を対応された。残り試合時間も短いなかでフィニッシュが取れる技が他にもあったのが強みだった。

 朱里はこの2連勝でチャンピオンとしての地位を盤石のものにした。セミファイナルでは、"白いベルト"ワンダー・オブ・スターダム王者である上谷沙弥が両国大会2連勝。こちらは林下、中野たむから価値ある勝利をあげている。

 両国2連戦、結果として赤と白の2大王座はチャンピオンが変わらなかった。だが、それは"動きがなかった"というわけではない。朱里と上谷は、いずれも昨年12月に初戴冠を果たした。昨年は赤いベルトは林下、白いベルトはたむが防衛を重ねて引っ張ってきたが、その瞬間に一気に流れが変わった。
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破れたからこそジュリアの「打倒・朱里」への想いは強く――