フィギュア

「全然上手くいかなくて」――“正真正銘のトップスケーター”鍵山優真が明かした苦悩。18歳はいかにメダルを掴んだか

沢田聡子

2022.04.01

昨季の世界選手権で銀メダリストとなった鍵山は、今季序盤はプレッシャーに悩まされていたという。(C)Getty Images

「せっかくのオリンピックなので、変に緊張して悔いを残したくないという気持ちが大きかったので、楽しく。今までは緊張して、自分をだますために『楽しまなきゃ』と思っていたんですけど、今日は心の底から楽しく過ごせました」

 北京五輪・男子シングルで銀メダルを獲得した鍵山優真は、個人戦に先立って行なわれた団体戦でもフリーに出場、1位になって日本の銅メダル獲得に貢献している。団体戦・フリーの後にミックスゾーンで語ったのが、冒頭の言葉だ。

 北京五輪・個人戦ショートの後も、2位発進した鍵山は「オリンピックは楽しいですか」と問われ「楽しめています」と答えている。

「このまま、この気持ちを忘れずに最後まで、オリンピック生活とこのフィギュアスケートを楽しんでいきたいなと思います」

 その言葉通り、初出場の五輪で銀メダリストとなった鍵山は閉会式にも出席、北京五輪を堪能していた様子だった。

 昨季、鍵山は世界選手権で銀メダルを獲得し、この上ないシニアデビューを果たした。しかし、今季序盤はその結果が重荷になっていた。北京五輪ショート後のミックスゾーンで、鍵山は今季ショートに苦しんでいた理由を「やっぱり気持ち的な部分が一番大きくて」と語っている。

「いろいろ自分で勝手に背負わせてしまったりだとかしていたので、そこがプレッシャーになっていたんじゃないかなと思っています。勝手に去年の結果のことや、いろいろ期待されているなかで『もっと新しい自分を出していかなければいけないな』と考えていたのが、マイナスの方向につながってしまったかな」

 昨季の好成績にとらわれていたことに気づき、練習してきた成果を出そうと集中した鍵山は、北京五輪で力を出し切れたのだ。

 ただ、その約1か月後に行なわれた世界選手権では「ちょっとオリンピックの時と違って、少し緊張してしまった部分があった」とショート後に語っているように、五輪に比べると少し硬さもみられた。ショート・フリーともトリプルアクセルにミスが出たのが痛かったが、しかしそれでも大崩れはせずに、昨季に続いて銀メダルを獲得。正真正銘、世界のトップクラスに位置していると証明した。
NEXT
PAGE
五輪、世界選手権を終えて鍵山が語った苦悩