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格闘技・プロレス

“幻”と闘った南アボクサーが脳出血で死去。誹謗中傷を受ける対戦相手は悲痛な心境を吐露「殺すつもりなんてなかった」

THE DIGEST編集部

2022.06.11

壮絶な殴り合いとなることもあるボクシング。そのなかで南アフリカ人選手のショッキングな死が波紋を広げている。(C)Getty Images

壮絶な殴り合いとなることもあるボクシング。そのなかで南アフリカ人選手のショッキングな死が波紋を広げている。(C)Getty Images

 現地時間6月8日、南アフリカのプロボクシングを統括するボクシング南アフリカ(BSA)は、ライト級のシミソ・ブテレジ(南アフリカ)が5日に行なわれたタイトルマッチ後に、脳出血のために亡くなったと発表した。24歳だった。

 5日に開催されたWBFアフリカのライト級タイトルマッチは壮絶な打ち合いだった。そのなかで10回に、対戦相手のシフェシレ・ムントゥングワ(南アフリカ)をロープ際に追い詰めたブテレジは、猛ラッシュでダウンを奪う。しかし、その直後に彼の様子が一変した。

 ダウンをもぎ取ったブテレジは、再開後にフラフラとムントゥングワのいない方向へ歩き出すと、まるで“幻”と対峙するかのようにあさっての方向へパンチを繰り出したのである。

 この行動を危険と判断したレフェリーは即刻試合をストップ。すぐさま病院に運ばれたブテレジは、現地報道では安定した状態にあると報じられていたが、7日に脳出血のために帰らぬ人となった。

 突然の訃報を伝えた米メディア『ESPN』によれば、試合に向けた調整段階でコンディション面は問題がなかったという。それだけに試合で負ったダメージが原因と見られている。

 もっとも、試合中の出来事だけに不可抗力だったと言える。だが、すでにムントゥングワのもとへは数多くの誹謗中傷のメッセージが相次いでいるという。南アフリカの日刊紙『Sowetan Live』の取材で、彼は次のように悲痛な心境を打ち明けている。

「シミソが入院した時から私はソーシャルメディアで激しい批判と侮辱にさらされた。そして彼が亡くなったいま、そのレベルはもう別の次元に達している。もう耐えられないよ。私に残された道はただ一つ……自分で死ぬことだ」
 
 ライバルの死とそれに対する反響に、やりきれない想いを吐露したムントゥングワは、さらにこう続けている。

「たしかに彼は私との試合が原因で亡くなったかもしれない。でも、私は彼を殺すつもりなんてなかった。望んでいたのはただタイトルを獲ることだけ。それで家族や自分の人生を一変させられると信じていた。それだけだったんだ」

 そして、「悲しく、とてもつらいが、殺すつもりでリングに上がってなんかいない」と繰り返したというムントゥングワ。現地で行なわれるブテレジの葬式には「怖くて出られない」と語った。

 なお、BSAは、今回の件について独立した医学的調査を行なうとしている。ムントゥングワへの誹謗中傷をやめさせ、さらにボクシングの安全性を高めるうえでも、科学的な見地から真相を明らかにする必要がありそうだ。

構成●THE DIGEST編集部

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