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水泳界はトランスジェンダー選手の女子競技への出場禁止を決定! 各国では賛否両論「酷だ」「間違いなく正しい方向へ」

THE DIGEST編集部

2022.06.22

トーマスのようなトランスジェンダー選手の女子部門への参戦は小さくない話題となった。だが、その問題に国際的な決定が下された。(C)Getty Images

 水泳界で重大な決定が下された。

 現地時間6月19日、国際水泳連盟(FINA)は、ハンガリーのブタペストで行なわれた臨時総会後に、出生時の性別と自認する性が異なるトランスジェンダー女子選手の女子の部への出場禁止とともに、「オープンカテゴリー」を新設すると発表した。

 かねてからトランスジェンダー女子選手の競技参加は懸案事項だった。競泳界では、全米大学体育協会(NCAA)選手権の女子500ヤード(約457メートル)自由形で、2020年まで男性として競技を続けていたリア・トーマス(米国)が初制覇。東京五輪女子400メートル個人メドレーの銀メダリストであるエマ・ワイアントに1秒75差をつける4分33秒24での優勝は、賛否両論を巻き起こしていた。

 当のトーマス本人は「答えはいつもシンプル。私は男じゃない。トランスジェンダーも他のアスリートたちと同様に、もっと尊重されていいはず」と語り、女子選手として大会に参加する意味を強調していた。だが、周囲からの反発は大きく、彼女の参戦は国際的な問題へと発展していった。

 そうしたなかでFINAは「出場禁止」という明確なルールを設けた。フセイン・ムサラム会長は「トランスジェンダーの選手が、自らが選択した性別で戦いたいと思う気持ちは理解している。だが、優遇があってはならない」とし、「さっそく作業部会を立ち上げ、大規模大会においてオープンカテゴリーを設置することを目指している。我々が先陣を切る」と、新部門に自信を示した。
 
 決定に際して問題が全くないわけではない。FINAに属する一部の医療委員会からは、女子選手としての出場資格が得られる期限が、タナー段階2(身体的発育が始まる時期)以降の男性の思春期をまったく経験していない12歳前とされたことについて、「10代に残りの人生を決断させるのは酷だ」という意見も出たという。

 しかし、FINAのメンバー152人の71%によって賛成された新方針については、やはり好意的に受け止める声が大半を占めている。女性として大会に参戦したトーマスとの対戦経験があるケンタッキー大学のライリー・ゲインズは、米放送局『FOX Sports』の取材で、「間違いなく正しい方向に歩むための第一歩になる」と応えている。

「女子スポーツの公平性を保つための一歩になると思う。もちろん、それですべてが解決されるわけではないけど、正しい方向への一歩であることは間違いない。これは過去50年以上も女子選手たちが、公平なチャンスを得るために努力して得たもの」

 なお、今回の決定によって、トーマスは2024年に開催されるパリ・オリンピックには、新設される「オープンカテゴリー」が定着しない限り出場できなくなる。以前に複数の米メディアで「オリンピックに出たい」と語っていたが、はたして彼女の胸中やいかに――。

構成●THE DIGEST編集部

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