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「僕は死んでいた」鈴鹿で“九死に一生を得た”ガスリー。物議を醸した作業車とのハプニングを回想「全く理解できない」

THE DIGEST編集部

2022.10.10

雨の中での厳しいレース。そのなかでハプニングに遭遇したガスリーは怒りの声を上げた。(C)Getty Images

雨の中での厳しいレース。そのなかでハプニングに遭遇したガスリーは怒りの声を上げた。(C)Getty Images

 文字通りハイスピードの争いが繰り広げられるF1にあっては、ほんのちょっとした出来事が、大事に至る場合がある。10月9日に開催された日本グランプリの決勝では、そのリスクが垣間見えるシーンがあった。

 あいにくの雨の中でスタートしたこの日は、ウェットコンディションだった影響からレースも“荒れ模様”に。1周目にカルロス・サインツJr.(フェラーリ)のクラッシュによって、セーフティカーが出され、後に赤旗中断となる展開となった。

 そのなかで命の危機に苛まれたのは、アルファタウリのフランス人レーサー、ピエール・ガスリーだ。

 この日、1周目にサインツJr.のクラッシュによって飛ばされた看板にぶつかり、新しいフロントウイングに交換するためにピットインを余儀なくされていた彼は、序盤から大きく後れをとっていた。

 それでも2周目に隊列に追いつこうとしたガスリーはサインツJr.の起こしたクラッシュ現場に差し掛かった際に車の回収にあたっていた作業車と衝突しかける事態に遭遇。悪天候による視界不良のなかでのハプニングに25歳は無線を通して「おい! あのトラクターはなんだ! なんでコース上にトラクターがいるんだ!」と怒りを露わにしていた。

 もっとも、ガスリーが問題の場面を通過した際には赤旗が出ていた。にもかかわらず、最大で251キロのスピードで走行していたため、最終的にフランス人ドライバーはF1競技規則の第57.2条(中断のシグナルが出されたら、すべての車両はピットレーンまでゆっくりと進む)に違反したと判断され、レース結果に20秒が加算されるペナルティーを受けた。
 
 だが、当のガスリー本人は、英衛星放送『Sky Sports』などの取材に対し、「スピードは問題ではない」として走行中の車両がいる間の回収作業は不必要だったと主張。そして、「僕らは8年前にジュールを失った。素晴らしい男であり、ドライバーをね。それも今日と同じレース場、同じコンディションで、クレーン(回収車)と衝突して、だ」と、2014年の日本グランプリで不慮の事故に遭い、他界したジュール・ビアンキに想いを馳せながら、こう続けた。

「今日はどうなっていただろう。いったいどうしてクレーンがコース上にいる必要があるんだい? それが僕には全く理解できない。もちろん恐かったよ。あの場面でぶつかっていたら、スピードが200キロだろうが、100キロだろうが関係ない。僕はそのまま死んでいた。ジュールにも、彼の家族にも、そして僕たちF1レーサーにも失礼なことだ」

「僕らは常に命懸けなんだよ。世界一の仕事をしているという自負もある。だからこそ、お願いしたいのは、僕らの安全を守ってほしいということだけ。普通に走るだけでも十分に危険なんだからね」

 最終的にペナルティーも響いて18位でレースを終えたガスリー。まさに間一髪で九死に一生を得た彼の訴えは、切実だった。

構成●THE DIGEST編集部

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