専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
フィギュア

【現地取材】紀平梨花の“国際大会復帰演技”をどう評価する?「収穫もあった」と本人も手応えのパフォーマンスを振り返る

沢田聡子

2022.10.11

ジャパンOPで『タイタニック』を披露した紀平。写真:田中研治(The Digest写真部)

ジャパンOPで『タイタニック』を披露した紀平。写真:田中研治(The Digest写真部)

 約1年半ぶりの国際大会となるジャパンオープン(10月8日、さいたまスーパーアリーナ)で演技を終えた紀平梨花の口元は、「まあまあ」と動いたように見えた。

 紀平はシニアデビューシーズンに出場した2018年グランプリファイナルで優勝し、いきなり世界トップに駆け上がっている。ジュニア時代から武器としてきたトリプルアクセルに加え、2020年全日本選手権では4回転サルコウも成功させ、最強のロシア女子に対抗できる数少ない選手として存在感を示してきた。しかし北京五輪シーズンだった昨季、シーズン開幕前の7月に判明した右足首疲労骨折のため全休を余儀なくされた。目標としてきた北京五輪への道を断たれた無念さを越え、完治はしていない右足をいたわりながら今季に臨んでいる。

 復帰戦となる中部選手権(9月23~25日)で全日本選手権への出場資格を勝ち取った直後、紀平は右足に痛みを感じていた。ジャパンオープンの出場辞退も考えたが、中部選手権の数日後にMRIを撮り「少し痛みは出ることもあるが、徐々にやっていけば大丈夫」という診断を受けて出場を決めたという。

「たくさん(の練習)はストップがかけられているけれども『少しずつやっていいよ』という段階だったので、ぎりぎりのラインにはなりますけど、出たい思いもやっぱりあったので、気持ちも優先して出ることにしました」

 北京五輪を前に休む勇気が持てなかった昨季の苦い経験から得た慎重さを上回ったのは、「観客の前で滑りたい」という選手としての本能といえる欲求だった。
 
 フリーだけで競うジャパンオープン、紀平は昨季から継続するプログラム『タイタニック』を滑る。淡いブルーと黒の衣装は昨季とは違う新しいもので、心を新たに臨む今季への意気込みを表しているようだ。スタート位置につく紀平に、観客席から背中を押すような拍手が降り注ぐ。

 どこか恐る恐る跳んでいる気配が漂っていた中部選手権とは違い、ジャンプには紀平らしい切れの良さが戻ってきていた。中部選手権ではサルコウ1種類の2本のみだった3回転は、トウループを加え3本跳んでいる。予定構成では3回転にしていたループは2回転に抑えており、着氷の乱れやコンビネーションジャンプの途中でターンが入るなど細かいミスはあったものの、中部選手権よりも前進していることは明らかだった。
 
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号