1990年代から2000年代初頭、日本では現在を上回るほどの"格闘技ブーム"があった。リードしたのは、立ち技イベント「K-1」。その個性豊かなファイターたちの魅力を振り返る。
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格闘技の世界で最も好まれるファイターは"倒し屋"と呼ばれるタイプだろう。KOを狙って一直線。駆け引きなしで豪快にパンチを振るう、そんな選手だ。
かつて一世を風靡したK-1 WORLD MAX、中量級の闘いにおいて、その代表格だったのがマイク・ザンビディス(ギリシャ)だ。
格闘技史においても縁が深いギリシャはアテネで生まれたザンビディスは、少年時代からキックボクシングを始め、並行してボクシングでも研鑽を積んだ。K-1に挑戦してからも、ザンビディスはそのパンチで対戦相手の脅威となり、観客を熱狂させた。
2002年にオセアニアトーナメントで実力者のジョン・ウェイン・パー(オーストラリア)を下して優勝。勢いそのままに2003年に日本初登場を果たすと、前年の第1回世界トーナメントで優勝したアルバート・クラウス(オランダ)を渾身の右フックでKOしてみせた。
その年の3月に行なわれた世界トーナメントでは魔裟斗に惜敗。しかし、強烈な破壊力を持っていたザンビディスはK-1 MAXに欠かせない選手になっていく。
戦績をトータルで見れば、トップ中のトップというわけではなかった。世界トーナメントに優勝することはできず、勝ったり負けたりを繰り返す時期もあった。闘い方がシンプルなだけに、攻略されやすかったのかもしれない。ただ延長にもつれる試合も印象的で、粘りのあるファイターでもあった。
何より彼の存在を忘れられないものにしているのは、2005年5月の山本"KID"徳郁戦だ。KIDは前年にK-1初参戦、いきなり村浜武洋をKOして人気が爆発していた。さらに総合ルール、ミックスルールで連勝。大晦日には魔裟斗戦を実現させた。結果として敗れたこの試合だが、KIDはザンビディスから先制のダウンを奪っている。
中量級最大のスターの1人がKIDだった。そんな相手を、ザンビディスは3ラウンドでKOしてみせる。自慢の右フックをくらわしての勝利は、粘り強さも見せつけた真骨頂とも言える倒しっぷりだった。
日本では"鉄の拳"と呼ばれたザンビディス。英語の"アイアン"はマイク・タイソンに倣ったものだろう。倒し屋ゆえの不利もあったが、だからこそ勝った時の魅力も大きかった。ザンビディスのように個性を全面に打ち出したファイターがいたから、K-1 MAXは面白かった。
取材・文●橋本宗洋
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かつて一世を風靡したK-1 WORLD MAX、中量級の闘いにおいて、その代表格だったのがマイク・ザンビディス(ギリシャ)だ。
格闘技史においても縁が深いギリシャはアテネで生まれたザンビディスは、少年時代からキックボクシングを始め、並行してボクシングでも研鑽を積んだ。K-1に挑戦してからも、ザンビディスはそのパンチで対戦相手の脅威となり、観客を熱狂させた。
2002年にオセアニアトーナメントで実力者のジョン・ウェイン・パー(オーストラリア)を下して優勝。勢いそのままに2003年に日本初登場を果たすと、前年の第1回世界トーナメントで優勝したアルバート・クラウス(オランダ)を渾身の右フックでKOしてみせた。
その年の3月に行なわれた世界トーナメントでは魔裟斗に惜敗。しかし、強烈な破壊力を持っていたザンビディスはK-1 MAXに欠かせない選手になっていく。
戦績をトータルで見れば、トップ中のトップというわけではなかった。世界トーナメントに優勝することはできず、勝ったり負けたりを繰り返す時期もあった。闘い方がシンプルなだけに、攻略されやすかったのかもしれない。ただ延長にもつれる試合も印象的で、粘りのあるファイターでもあった。
何より彼の存在を忘れられないものにしているのは、2005年5月の山本"KID"徳郁戦だ。KIDは前年にK-1初参戦、いきなり村浜武洋をKOして人気が爆発していた。さらに総合ルール、ミックスルールで連勝。大晦日には魔裟斗戦を実現させた。結果として敗れたこの試合だが、KIDはザンビディスから先制のダウンを奪っている。
中量級最大のスターの1人がKIDだった。そんな相手を、ザンビディスは3ラウンドでKOしてみせる。自慢の右フックをくらわしての勝利は、粘り強さも見せつけた真骨頂とも言える倒しっぷりだった。
日本では"鉄の拳"と呼ばれたザンビディス。英語の"アイアン"はマイク・タイソンに倣ったものだろう。倒し屋ゆえの不利もあったが、だからこそ勝った時の魅力も大きかった。ザンビディスのように個性を全面に打ち出したファイターがいたから、K-1 MAXは面白かった。
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