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【GPファイナル展望】男子シングルを制するのは“世界王者”宇野昌磨か。好敵手となり得る“新時代の旗手”マリニンの現状は?

沢田聡子

2022.12.08

GP2戦で連勝しているマリニン(左)と宇野(右)。直接対決となるファイナルはどちらに軍配が上がるか?写真:田中研治(The Digest写真部)

 シーズン前半のクライマックスとなるフィギュアスケートのグランプリ(GP)ファイナルが、12月8日よりイタリア・トリノで開催される。コロナ禍により2年連続で中止を余儀なくされたファイナルだが、今季は3年ぶりの実現とあって期待も高まっている。

 男子シングルは、世界王者・宇野昌磨と世界初の4回転アクセル成功で名を馳せたイリア・マリニン(アメリカ)のふたりが、いずれもGP2戦を連勝してファイナルに臨む。

 優勝したGPシリーズ第2戦・スケートカナダに続き第5戦・NHK杯に出場した宇野は、難しい戦いを強いられていた。世界で初めて成功させた自身の代名詞でもある4回転フリップが不調に陥っていたのだ。原因はスケート靴を調整し切れなかったことにある。

「ずっと積み上げてきた自分の基準を下げたくなかったので、すごくイライラしていた」という宇野を救ったのは、ステファン・ランビエールコーチの言葉だった。ショート前日の公式練習後に話し合う機会を設けた同コーチは、「完璧を求め過ぎずに」と諭したという。

「完璧というのは一つひとつやっていった先に待っているもので、目指すものではない」

 この言葉を聞いた宇野は「スケートと再びちゃんと向き合うことが出来た」と振り返っている。
 
 恩師の言葉で救われた宇野は、フリーの本番直前までエッジの位置を変え続けた。しかしフリーの6分間練習で4回転トウループを失敗した時に「エッジの位置が違うな」と感じている。調整し続けたことが裏目に出て、左足のエッジが「あまりにも違う方向にいってしまった」というのだ。

 後半グループ5番滑走の宇野は6分間練習終了から本番まで時間があったため、そこでエッジの位置を調整した。宇野は「本来なら(位置を変えたエッジには)何日かかけて慣らしていくものなので、どうなるか分からなかった」と振り返っている。

 しかしフリー本番では、4回転フリップが2回転になり、コンビネーションジャンプも2つしか入れられなかったもののなんとか演技をまとめ、ショート2位からの逆転優勝を果たした。練習につながる試合を望み、一発勝負での成功は本意ではないという宇野だが、やはりそこはベテランの経験が生きたというべきだろう。
 
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