格闘技・プロレス

井上尚弥が見せたアリ顔負けの“ノーガード挑発”に海外メディアも仰天!「バトラーが過度なほどに消極的だった」

THE DIGEST編集部

2022.12.14

両手を後ろに回して、ノーガード戦法を用いた井上(左)。その振る舞いに世界も驚いた。写真:AP/アフロ

 会場も「おっ」と沸く瞬間だった。12月13日に東京・有明アリーナで行なわれたボクシング世界バンタム級4団体統一戦での一コマだ。

 試合は序盤から一方的な展開となった。下馬評でも「圧倒的有利」と予想されていたWBAスーパー、WBC、IBF世界バンタム級統一王者の井上尚弥(大橋)が、対峙したWBOバンタム級王者のポール・バトラー(英国)を守勢に回し、積極果敢に攻め続けた。

 しかし、34歳のベテラン戦士はとにかく耐えた。小刻みなステップワークを駆使しながら相手に攻撃の的をしぼらせず、さらにガードも一切下ろさなかった。そんな相手のアウトボクシングに井上も動いた。6回に両手をぶらんと下げるノーガードでパンチを誘って不敵な笑みをみせると、8回には両手を後ろに組みながら首をやや前に突き出してバトラーを挑発した。

 結局、11回にギアを上げた井上の猛ラッシュにバトラーが屈して試合はKOで終了。29歳の日本人ファイターが史上9人目、日本人(アジア人)では史上初の完全統一を果たした。

 試合後、「予定したプラン通りにいかなかった」と語ったバトラーに対し、井上は「何しに日本に来ているんだという想いもあった。苛立ってはいないですけど、本当に勝つ気があるのか、と」「引き出すためにああいう形で挑発というか、はい、しました」とやや呆れた様子で振り返った。
 
 世界屈指の"モンスター"が見せた「挑発行動」は、海外メディアでもクローズアップされている。英スポーツ専門ラジオ局『talk SPORT』は「イノウエのまいた餌にバトラーは最後まで手に取らなかった」として、次のように伝えた。

「試合が半ばを過ぎたあたりから、イノウエは両手を下げたり、後ろに組んだりと、バトラーを小馬鹿にしたように振る舞った。しかし、バトラーは一向に心を開こうとはしなかった。彼は勝つためにというよりも、生き残るために日本へやってきたようだった。イノウエは最後まで餌をまいて挑発し続けたが、バトラーは乗らなかった」

 また、米放送局『CBS』はバトラーが「過度なほどに消極的だった」としたうえで、「試合はスパーリングマッチのようなものだった。さすがのイノウエもいつもとは違う方法で彼を翻弄することを余儀なくされた」とレポート。そして挑発シーンについては、往年のレジェンドの名を引き合いに痛快に紹介した。

「日本の"モンスター"は、バトラーの高いガードを下ろさせるために、あらゆる策を講じた。時折スタンスを変えては、モハメド・アリの有名なシャッフルを真似たこともあった。そして最終的にはロープ際での激しいコンビネーションでバトラーをダウンさせた」

 終始、冷静さを失わずに、余裕を持って、ベテランを攻め落とした井上。珍しく披露した"挑発"に史上初の快挙を成し遂げた偉才の凄みを見た。

構成●THE DIGEST編集部

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