12月13日、ボクシングのWBAスーパー＆IBF＆WBC世界バンタム級王者・井上尚弥（大橋）が、東京・有明アリーナでWBO世界同級王者ポール・バトラー（英国）に11回1分9秒KO勝ち。アジア人初の4団体王座統一に成功する快挙をやってのけた。

　一方的な試合で師走の日本列島に歓喜を届けた。井上は終始ガードを一切下ろさなかったバトラーを前に、序盤から手数を増やしていきながら攻め続け、終盤11回にようやく堅く閉じられていた相手の牙城を崩す。左右のフックをボディと側頭部に当て込んで、ぐらつかせると、そこから怒涛のラッシュを展開。これには英国人戦士もたまらずダウン。そのままレフェリーが試合を止めた。

「プラン通りにいかなかった」とは試合後のバトラーの言葉だ。まるで亀のように徹底的に守る戦法を取った34歳は、井上がノーガードで顔を差し出す挑発をしようともガードを下げず。これによって“モンスター”を苛立たせた。

　相手の守勢を前にした井上について、「ボディーショットで侵攻したが、試合が続くにつれて明らかにイライラしていた」と伝えた英公共放送『BBC』は、バトラー陣営がセコンドからしきりに送っていたという言葉を紹介している。
  「バトラーはトレーナーのジョー・ギャラガーや元世界チャンピオンのスコット・クイッグを含むセコンドから絶え間なく指示を受けていた。彼は『もう少し堂々としろ』としきりに声をかけられていたが、閉じこもった殻を破れずに、それに応えられなかった」

　試合後に井上は“挑発”の意図を説明する際に、「何しに日本に来たんだ。本当に勝つ気があるのか」と語気を強めて語った。ここまで言われてしまうほど、頑なに防御態勢を崩さなかったバトラーだが、先述の試合後のコメントを訊く限りでは、ガードの上からでも容赦なくハードパンチを打ち付ける“怪物”を前に「ガードを下ろせなかった」というのが、正しいのかもしれない。

　いずれにしても、英国メディアから「彼は生き残るために日本へ行った」（英スポーツ専門ラジオ局『talk SPORT』）と皮肉られてしまっているバトラーの守戦。その是非を巡る議論はしばらく続きそうだ。

構成●THE DIGEST編集部

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