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格闘技・プロレス

「イノウエはネリと同じ道を辿る」――井上尚弥の階級上げは危険!? 現スーパーバンタム級王者の忘れがたき言葉

THE DIGEST編集部

2021.12.18

スーパーバンタム級の二冠王に君臨するフルトン(右)。階級上げを目指す井上(左)に彼が送った言葉とは?(C)Getty Images

スーパーバンタム級の二冠王に君臨するフルトン(右)。階級上げを目指す井上(左)に彼が送った言葉とは?(C)Getty Images

「4団体統一をすごく重視してきたけど、こじれてスムーズにいかないなら、スーパーバンタム級も考えたい」

 12月14日に両国国技館で行なわれたアラン・ディパエン(タイ)とのWBA・IBF世界バンタム級タイトルマッチを終えた井上尚弥(大橋ジム)は、そう自身の願望を口にした。これまで現階級の統一に強いこだわりを見せてきただけに、少し意外とも言える発言ではあった。
【動画】世界を驚かせた渾身のヘッドショット! 井上尚弥のKOシーンをチェック

 もっともバンタム級における井上は、向かうところ敵なしの強さを誇っている。プロキャリア22戦無敗で19KO。この戦績が物語る通り、日本が世界に誇る“モンスター”は、並みいる強敵たちを持ち前のハードパンチでねじ伏せてきた。14日のディパエン戦も相手のタフネスに苦しみながら、最後は渾身の左ストレートできちっとTKO勝ちを収めている。

「ドネアかカシメロのどちらかとやると思う」とも話している本人の悲願は、あくまでバンタム級の統一だ。しかし、そうした状況下でスーパーバンタム級への階級上げを匂わせたのには、過去にライトフライ級→スーパーフライ級→バンタム級と上げてきた28歳がキャリアの最盛期にある今、より高みを目指すのも悪くはないとする陣営の意向もあるのだろう。

 では、階級上げをすると仮定した場合に、どこまで世界と渡り合えるのだろうか。素人目には、井上のハードパンチならば十分に闘えると期待してしまうが、そう甘い階級ではない。

 実際、2020年の2月にスーパーバンタム級に上げたルイス・ネリ(メキシコ)は、WBA王者となって迎えた2戦目、WBA王者ブランドン・フィゲロア(アメリカ※当時)とのタイトル統一戦で、自慢のパワーが全くと言っていいほど通じずに敗れている。
 
 無論、ネリ本人の技術不足は否めないが、すべての根幹を成すパワー面の違いは歴然たる差があった。それは高いKO率を誇るモンスターと言えども、軽視できない問題だろう。

 ここで、思い出したい言葉がある。今年6月にWBO・WBCスーパーバンタム級王者のステファン・フルトン(アメリカ)が、米記者ブライアン・カスター氏のポッドキャスト「The Last Stand」で他でもない井上に送ったものだ。

 当時から階級上げがにわかに囁かれていた日本人ファイターに対してフルトンは、「イノウエにはあっさり俺が勝つと思う」と言ってのけたのである。

「俺にあいつは小柄すぎるし、身長も低い。リーチでも及ばないから、あのパワーショットをずっと受け続けることもない。もちろん優秀なファイターだとは思う。別にその事実を貶めるつもりはないよ。だけど、俺より優秀ということはないさ。階級を上げて、ネリはフィゲロアに負けた。イノウエも同じような道を辿るだろうね」

 フルトンは井上よりも8センチ以上も長いとされるリーチなどを根拠に階級上げに異論を唱えた。なるほど、あながち論拠はおかしくはない。

 繰り返しになるが、現階級での井上は敵なしだ。おそらくノニト・ドネアやジョンリエル・カシメロとの統一戦も勝利する可能性は高い。実力は世界が「モンスター」と崇める事実が如実に物語るところだ。

 それだけに4階級制覇への壮大な浪漫も感じるが、スーパーバンタム級では“壁”にぶつかるかもしれない。そう言わざるを得ないほど、ここからの階級上げには大きなリスクが伴うが、井上の決断やいかに――。

構成●THE DIGEST編集部
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