格闘技・プロレス

Sバンタム級でパワーの効果が落ちた時に問われる“真価”。井上尚弥も心待ちにする「未知の世界」とは?【現地発】

杉浦大介

2023.01.22

バンタム級返上とともに、スーパーバンタム級への階級上げを明言した井上。新たなキャリアで注目すべきところはどこか。写真:鈴木颯太朗

 世界ボクシングのバンタム級で史上初の4団体統一王者となった井上尚弥(大橋)は、1月13日に同階級の全タイトル返上を表明。"モンスター"(井上の愛称)が築くキャリアにおける重要な一章が終わった。
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 注目の"ネクストチャプター"は、スーパーバンタム級への挑戦。1階級を上げた井上がどんな戦いを見せてくれるかに世界中のファンの視線が集中している。

 今後、井上はバンタム級時代よりも1.8キロの増量をして戦う。では、この新階級で彼の課題になる点、そして周囲が注目すべき部分はどこなのか。それを考えた時に、米ボクシング専門メディア『BoxingScene.com』のシニアライターであるキース・アイデック記者の指摘は適切なものに思える。

「やはりパワーが通用するかが注目点になると思う。バンタム級とスーパーバンタム級の違いは4パウンドだけだが、1階級の違いは人々が考えている以上に大きい。当然のことだが、上の階級に上げれば上げるほど相手の耐久力も増す。イノウエのパンチがこれまでと同じ効果を発揮するかどうかはわからない」

 井上はスキル、守備力も備え、欠点の見当たらないオールラウンドな選手ではある。なかでも、相手の戦闘能力を一瞬で損わせ、常に警戒を促させる爆発的なパワーが大きなアドバンテージになっているのは紛れもない事実だ。
 
 スーパーバンタム級の世界タイトルを持つWBA、WBO同級王者スティーブン・フルトン(アメリカ)とWBC、IBF同級王者ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)は、いずれもプロキャリアでは無敗。まだ深刻なダメージを受けた姿すら見せていない。

 そんな彼らに対しても、井上がハードパンチの効果を現在と同様か、それに近いレベルに保てれば、バンタム級で見せたような無双状態が続く可能性は高い。しかし、パンチを当てた際の反応がこれまでと違うものになった時には――。

「スーパーバンタム級の体重であればもっと動けるし、力も発揮できるのかなと思っています。とはいえ、それは自分が動けるというだけの話。より大きな相手にどれだけのダメージを与えられるか、自分が(被弾したときに)どれだけのダメージを感じるかというのはわかりません。そこは未知の世界になります」

 昨夏に筆者とのインタビューで"未知の世界"という言葉を使った井上の言葉は字面だけを見れば不安そうに感じられるかもしれない。だが、実際には楽しみで、勝負の時が待ちきれないと感じているようにすら思えた。
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「バンタム級なら普通に倒していたパンチでも耐えられてしまうかも」(井上)