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格闘技・プロレス

ボクシングの世界は甘くない。それでも“勝負師”那須川天心に期待したくなる言葉「立ってただけで、凄えみたいのは違う」

橋本宗洋

2023.02.28

ボクシング界に殴り込む那須川。アンチも少なくない世界に挑むことこそ彼の真骨頂だ。写真:山口フィニート裕朗/アフロ

ボクシング界に殴り込む那須川。アンチも少なくない世界に挑むことこそ彼の真骨頂だ。写真:山口フィニート裕朗/アフロ

 いよいよ、那須川天心がボクシング界に打って出る。

 那須川は言わずと知れたキックボクシング界最高峰のファイターだ。昨年6月には、RISEの代表として、K-1のカリスマ、武尊との団体の枠を超えたトップ対決を実現させ、東京ドームを超満員に導いた。結果はダウンを奪っての判定勝ち。以前からボクシング転向を表明していた24歳は、この大一番がキックボクシングでのラストマッチとなった。

 単に強いだけの選手ではない。そのチャレンジ精神も特筆に値する。ヒジ打ちなしルールのキックボクシング大会『RISE』を2014年7月にデビューして以来、ホームリングにしてきたが、キャリアを重ねるなかでヒジありのKNOCK OUTにも参戦。そこで現役ムエタイ王者だったワンチャローン・PKセンチャイジムをKO。しかもバックキック1発で倒すというド派手な勝利で、会場を沸かせた。

 さらにRIZINでは総合格闘技、ミックスルールでも闘っている。団体から総合での闘いを求められ、那須川は「ここでやるかやらないかで俺の人生が変わる」と腹を括って挑んだ。結果、彼の人気と知名度はさらに上昇。RIZINでも、自分が望むキックボクシングの試合が組まれるようになった。

 RIZINでの那須川といえばフロイド・メイウェザーとのエキシビションも忘れられない。体重差がありながら、やはり彼はチャレンジを選んだ。
 
 那須川はボクシングに通用するのか。そして、どれだけの結果が出せるのか。そこに関して、筆者は何も心配していない。よほど不測の事態でもない限り成功するはずだ。陣営もマスコミもファンも世界タイトルを意識する。それが当然と言ってもいいくらいの選手なのだ。その根底に、チャレンジを恐れない心と、これまでにも示してきた適応力がある。

 那須川は今年に入ってから帝拳ジムでの練習と、そこからのボクシングデビューを正式に公表し、プロテストも危なげなくパスした“ボクサー・那須川天心”の初舞台は4月8日、有明アリーナ。世界戦も組まれているビッグマッチのワンカードとして、日本バンタム級4位の与那覇勇気と対戦する。スーパーバンタム級での試合だが、デビュー戦の相手としては、かなり格上と闘うことになる。

 デビュー戦に向けた会見では「この試合はボクシングからの果し状」と語った那須川。「僕が勝って証明して、尊敬や覚悟をもってボクシングと闘いたいと思います」とした24歳は、アンチの存在について言及する場面もあった。

「ボクシングは甘くない」といった声を意識しているのだろう。そうした声は決して多数派ではないと思われるのだが、ボクシング界の大きさや歴史を考えると無視もできないといったところか。那須川はそれだけ慎重に、あるいは周到に準備してボクシングに向き合っている。簡単に成功すると考えていないのである。
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