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格闘技・プロレス

ボクシングの世界は甘くない。それでも“勝負師”那須川天心に期待したくなる言葉「立ってただけで、凄えみたいのは違う」

橋本宗洋

2023.02.28

昨夏の武尊戦ではパワフルかつ鋭いパンチでドームを沸かせた那須川。K-1屈指のカリスマを下したポテンシャルは、ボクシング界でも光り輝くはずだ。写真:徳原隆元

昨夏の武尊戦ではパワフルかつ鋭いパンチでドームを沸かせた那須川。K-1屈指のカリスマを下したポテンシャルは、ボクシング界でも光り輝くはずだ。写真:徳原隆元

 今年に入って一気に動いた那須川のボクシングデビューだが、急に決まった話ではない。武尊戦後から彼はボクシングの練習も重ねてきた。また、彼のキックボクシングでのベスト体重は55kg。ボクシングのスーパーバンタム級に相当する。

 実力が実力だけに、実はかなり前から同階級の対戦相手は少なく(コロナ禍で外国人が呼びにくい状況もあった)、60kg前後でも試合をしてきた。だからといって、那須川はトレーニングで身体を大きくしようとはせず、55kgをキープしてきた。それも全てはボクシング転向を見据えての判断だろう。

 ボクシングデビュー後も、階級に関しては考えていくという。スーパーバンタム級は井上尚弥が世界王座統一を狙っているだけに、いち早く世界タイトルを狙うなら階級を下げる可能性もあるのではないか。

 K-1王者からボクシングに転向し、OPBF東洋太平洋スーパーバンタム級タイトルを獲得した武居由樹との対戦も期待したいところ。那須川のボクシングデビューには楽しみしかないと言っていい。もちろん甘い世界ではない。だが、彼のポテンシャルも並ではない。

 ここで言う『ポテンシャル』とは、単なる身体的、技術的な能力ではない。那須川の最大の強みは、その能力を支えるマインドだ。

 キック、総合格闘技、ミックスルールで公式戦全勝というレコードを持ち、KOも多い。といっても、KOばかりが魅力でもない。試合によっては「相手の光を消す闘い」を選ぶこともある。力でねじ伏せるような闘いばかりではないのだ。当人曰く「試合中に感情を出すといい結果にならない。丁寧に、確実に勝つと決めていました」。
 
「倒したい」「ファンが求めるKOを見せたい」。そういう欲よりもまずは勝つこと。20年9月の皇治戦後も“圧倒されながら最後まで立ち続けた皇治”を讃えるような風潮に釘を刺した。

「立ってただけで、凄えみたいなのは違うと思います。倒すか倒されるかとかも。それは試合が成立してないんです」

 試合は勝つためにやるもの。KOは結果であって目的ではない。格闘技界のスーパースターである那須川天心は、同時に一分の隙もない徹底した“勝負師”なのだ。

 これからはボクシングでの勝負であり、ボクシングとの勝負だ。ただ“やる”のではなく“勝つ”ために那須川天心は闘う。だからこそ期待が高まるのだ。

取材・文●橋本宗洋

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