ロシア・フィギュアスケート界の“皇帝”が取った大人げない行動に、さすがの“女帝”も呆れ顔だ。

　事の発端は現地２月16日に行なわれたロシア・ジュニア選手権。エフゲニー・プルシェンコ氏の門下生である２人の女子選手もエントリーしたわけだが、それぞれ２位と４位に終わった。これに怒りを露にした40歳のレジェンドは「もうウンザリだ！　彼女たちは高難度のジャンプを成功させているのになぜこんなに得点が低いのか！　どうしていつも私や私の生徒たちを目の敵にするんだ！」とまくし立て、「こんな不当な仕打ちが続くならば、彼女たちや親たちは他の国へ移って競技を続けようとするだろう」と、あろうことか教え子たちの“国籍変更”まで示唆したのである。

　当然、メディアやファンからは「FFKKR（ロシア・フィギュアスケート連盟）への脅迫だ！」「裏切り者」「身勝手な振る舞い」など批判が相次ぎ、瞬く間に矢面に立たされた。

　黙っていなかったのが、同大会で優勝したアリーナ・ゴルバチェワのコーチ、ソフィア・フェドチェンコ氏だった。プルシェンコ氏に対して「あれは一種のヒステリーね。彼は自身の指導におけるミスを認められない人なのよ」と断じ、国籍変更の論点についても「あんな言い方をしたらもはや恐喝だわ」と一刀両断したのである。

　この発言に我慢できなかったプルシェンコ氏が、まさかの強硬手段に打って出る。現地木曜日、FFKKRの倫理委員会にフェドロフ発言に関する意見書を提出し、提訴に踏み切った。通信社『TASS』によると「FFKKRは受理し、３月に入ってから委員会を開く予定だ」という。FFKKRのジャッジに公然と文句を言ったプルシェンコ氏が、その敵視するFFKKRに不服申し立てをしたのだから驚きの展開だ。
  　終わらないドタバタ劇にご立腹なのが、数多の名スケーターを育て上げた伝説の指導者、タチアナ・タラソワ氏だ。『Match TV』の取材に応じ、次のようにプルシェンコ氏の行動を断じた。
 
「なんてお馬鹿さんなのかしら！　それでも男なの？　ヒステリーが続いてしまっているようね。正直言って、この話題はもう飽き飽きなのよ。もう大会は終わっているし、今さら蒸し返してどうするのかしら。（提訴した行動を）支持なんてできないわね」

　そして76歳の名伯楽は「女性の発言に対してこんな手段に打って出るなんて……ちょっと小さい男だと言わざるを得ないわ」と吐き捨てた。とはいえ家族ぐるみで付き合いがあり、息子のように可愛がっているプルシェンコ氏が相手だけに、タラソワ氏からの“愛のムチ”と見るべきだろうか。

　ちなみにプルシェンコ氏は提訴の前に、アカデミーの公式インスタグラムにフェドチェンコ氏の履歴書を勝手に転載し、絵文字でその経歴を揶揄する投稿に及んだ。まさに糾弾されて然りの軽率な行動だったが、画像はすでに削除されている。

　フェドチェンコ氏は今回の提訴を受けて、『RIA Novosti』にコメントを寄せた。「プルシェンコ氏のことはアスリートとしても指導者としても尊敬しているけど、それとこれは話が別。私は私の選手を守るために、彼女の金メダルに疑いの目が向けられるべきではないと思って当然のリアクションを起こした」と話している。

構成●THE DIGEST編集部

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