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カナダ人スケーターの“現役ラストダンス”を後押しした日本の応援に米記者が感動「東京がまるでカナダに」

THE DIGEST編集部

2023.04.16

現役最後の演技を終えたメッシングに会場はスタンディングオベーションだった。写真:田中研治(THE DIGEST写真部)

 家族を愛し、多くのスケート仲間から愛された男がリンクに別れを告げた。

 4月15日、フィギュアスケートの世界国別対抗戦が東京体育館で行なわれ、大会3日目の種目はペアフリーと男子フリーを実施。日本は総合順位で合計94点の3位に終わった。

 2017年以来3大会ぶりの優勝を目指した日本は、2009年からの第1回から8大会連続で表彰台を守った。優勝は120点を獲得した米国で通算5度目、2位には95点を獲得した初出場の韓国が入った。

 そして、この試合で現役生活に別れを告げたスケーターがいた。カナダの男子シングル、31歳のキーガン・メッシングである。

 平昌、北京のオリンピック2大会に出場したカナダ人スケーターは今シーズンが始まる前に「これがラストシーズンになる」とすでに現役引退を表明。迎えたこの日の世界国別対抗戦が、"現役最後の演技"だった。

 第4滑走でコールされたメッシングに、会場は割れんばかりの大歓声が送られた。母国のカナダ国旗が大きく揺れ、まるでホームのような雰囲気を日本のスケートファンは作った。

 フリー曲『Home』が流れ、演技が始まると会場は手拍子でメッシングを後押し。冒頭4回転のコンビネーションジャンプを決めた31歳は、演技の合間に自身の代名詞とも言える技を魅せる。

 軽やかな滑りから右手を氷上につけて、左足を軸にしてリンクに顔を接近させ、体を横向きに倒し氷に頬ずりするようにする見事な『ハイドロブレーディング』を披露。会場を大いに盛り上げた。最後は高速スピンでフィニッシュすると、満面な笑顔で会場全体をカナダ国旗で埋めた日本人に頭を下げ声援に応えた。

 カナダ代表の仲間と座ったキスアンドクライでのフリー得点は172.99点。7位で"現役ラストダンス"を終えると、感慨深げな表情を見せ会場を後にした。
 
 自国の選手以外にも熱心に応援する日本人の姿に海外記者は驚きを隠せないようだ。現地で取材していた『The Japan Times』などに寄稿するダン・オルロウィッツ記者はメッシングの演技後の会場の様子をツイッターに投稿した。

 スタンディングオベーションでカナダ人スケーターを称える雰囲気を「東京体育館が、まるで一時的にカナダの11番目の州になった」と表現。日本人の応援に感動していた。続けて、「競技生活を締めくくるキーガン・メッシングは、観客を魅了するパフォーマンスを見せた」と現役ラスト演技を称えた。

 米国のフィギュアスケート専門記者ジャッキー・ウォン氏もカナダの名スケーターの引退を惜しんだ。同記者はツイッターにメッシングのフリーのジャンプ結果を記すと、「メッシングはこれでキャリアを終了とした。彼がいなくなるのは寂しい」と綴った。

 フィギュアスケート専門メディア『Golden Skate』は現役最後の演技を終えたメッシングを直撃した。メッシングは「美しい日本の皆さんのために、もう一度演技ができたことをとても嬉しく思う」と答えると、「最後のフリースケートを、この会場にいる友人たちと一緒にこの瞬間を祝ってくれたのは、とても特別なことでした。氷上に立ったときは恐怖を感じていましたが、本当にすべてを捧げたいと思いました」と演技直前の心境を明かした。

 日本のファンの応援にも心を打たれた様子で「ここ国別対抗戦で終われたのは、本当に嬉しく完璧でした」と感謝を述べると、「自分の体があんなに長く持ちこたえられたことを嬉しく思います」と笑顔で話した。

 現役引退後は消防士になる予定だというメッシング。一番楽しみにしていることは「スターズ・オン・アイスのツアーに出る前に、家族と一緒に過ごすこと」だと言うと、「妻はスーパーヒーローだからね」と最愛の妻に感謝を述べた。
 
 笑顔が素敵なカナダ人スケーターは若い世代に後を託し、競技会から静かに身を引いた。

構成●THE DIGEST編集部

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