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ラグビー

【ラグビー】「悔しいけど、しょうがない」昨季王者に逆転負けも… イーグルス司令塔の田村優が仲間に示した“重圧を楽しむ”姿勢

向風見也

2023.05.15

初の4強入りを果たしたイーグルスの司令塔・田村。ドロップゴールなどで存在感を発揮した。(C) Getty Images

初の4強入りを果たしたイーグルスの司令塔・田村。ドロップゴールなどで存在感を発揮した。(C) Getty Images

 世界で戦う選手は一味違う。横浜キヤノンイーグルスでレギュラー入りを目指す25歳の山本雄貴は、4月某日のミーティングでそう思い知った。

 チームは国内リーグワン1部で、初の4強入りを目指していた。直近の15日にあった東京サントリーサンゴリアスとの上位争いについて、司令塔の田村優がこう話したのを聞いたのだ。

【動画】田村が50m超のドロップゴール! 横浜Evs埼玉WK戦
「自分が責任を負う立場でいたかった。それを楽しみたかった」

 ホスト会場の日産スタジアムであったその試合で、田村は前半7分に交替していた。タックルした際に頭部が相手の膝に当たり、倒れ、担架で運ばれた。試合は9-11で惜敗した。

 34歳の田村は過去、2度のワールドカップに出場。広い視野と統率力、パス、キックの技術を武器に、長らく日本代表のスタンドオフを務めてきた。

 国内でもキャリアを積んだ。移籍4シーズン目の前年度までは、2季続けてイーグルスの主将を担った。

 役職から解かれた今季は、代表活動からも離れたことで開幕前のコンディション調整を充実させた。タックルの個人練習も重ね、身体を張ってきた。

 その田村から山本は、「責任」を「楽しみたかった」と聞いた。国際的戦士の凄みを再確認した。

「(重圧から)逃れたい人が多いなかで、それを、楽しむ、って…」

 5月13日、東京は秩父宮ラグビー場。晴れて4強入りしたイーグルスは、日本一を争うプレーオフトーナメントの準決勝に進んでいた。

 相手は埼玉パナソニックワイルドナイツ。昨季王者の艦隊とのバトルへ、田村は10番をつけて先発した。サンゴリアス戦後、脳震盪からの復帰プログラムを受けていた。

 決戦直前のことだ。チームがウォーミングアップを終え、グラウンドからロッカールームへ引き上げようとする際、田村はひとり残ってゴールキックを蹴りたいと申し出た。

「もう1本、いいですか」

 すると監督の沢木敬介が、「見て行こう」と切り出した。果たして田村は、仲間に見守られながら右隅からの難しい1本を蹴った。成功。盛り上がった。

 重圧を楽しもうとするらしい司令塔の周りには、田村とのプレーを楽しもうとする仲間がたくさんいた。
 
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