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世紀の一戦は新旧名手が揃った「三強」対決――。『花の15期生』柴田政人はウイニングチケットと頂へ【日本ダービー列伝/前編】

三好達彦

2023.05.26

1993年日本ダービーで主役となったのはウイニングチケット(左)。ビワハヤヒデ(右)と激闘を繰り広げた。写真:産経新聞社

1993年日本ダービーで主役となったのはウイニングチケット(左)。ビワハヤヒデ(右)と激闘を繰り広げた。写真:産経新聞社

 近年は「勝ちたいレース」を訊くとジャパンカップや、なかには凱旋門賞の名を挙げる若手ジョッキーも現れるようになったが、ひと昔前は同様の質問を投げかけると、ほぼ全員が「日本ダービー」と答えるのが当たり前だった。

 例えば、先ごろ定年で調教師を引退した小島太さんは特にダービーに強い憧れを抱いて騎手を目指したことで知られる。その小島さんに初めて騎乗する機会が訪れたとき、「夢にまで見た日本ダービーに乗れたんだから、もう騎手を辞めてもいいと思った。残りの人生はダービーに乗ったという思い出があれば生きていけるとさえ思った」と語っている。

 だが同時に、ダービーで2勝(1978年のサクラショウリ、1988年のサクラチヨノオー)を挙げていた小島さんは、こうも言った。

「乗れただけで十分だなんてことを言ってたけれど、人間は欲深いものでね。ひとつ勝つと、またもう1回勝ちたいと思うようになる。乗り役にそう思わせるのがダービーというレースなんだよ」
 
 1993年の牡馬クラシック戦線は「三強」の争いとの世評が高かった。まずは、3連勝でデイリー杯3歳ステークス(GⅡ)を制したものの、朝日杯3歳ステークス(GⅠ)、共同通信杯4歳ステークス(GⅢ)で2着と、勝ち切れないレースが続いたため、鞍上を岡部幸雄騎手にスイッチしたビワハヤヒデ。

 次に、ラジオたんぱ杯3歳ステークス(GⅢ)を制したものの、より鞍上を強化してクラシックを戦いたいという陣営の願いにより、すでに断トツの成績でリーディングジョッキーの座を占めていた武豊騎手を迎えたナリタタイシン。

 そして、柴田政人騎手がまたがったホープフルステークス(オープン)を楽勝、続くクラシック登竜門の弥生賞(GⅡ)を快勝してポテンシャルの高さを見せつけたウイニングチケット。個性豊かな3頭の魅力はもちろんだが、同時に手綱を取るのが武、岡部、柴田という新旧の名手揃いであることも大いにファンの興趣をそそった。
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