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【名馬列伝】西山牧場の“孝行娘”ニシノフラワー。「馬も怯んだ」と言わしめた鬼脚が炸裂した渾身レースとは?

三好達彦

2023.06.30

ニシノフラワー(中央)はスプリンターズSでGⅠ3勝目を挙げた。写真:産経新聞社

ニシノフラワー(中央)はスプリンターズSでGⅠ3勝目を挙げた。写真:産経新聞社

 長距離の逃げ馬として一世を風靡したセイウンスカイなどの生産、所有者として知られた西山牧場が創業したのは1966年のこと。創業者の西山正行はユニークな生産システムを取り、自前で輸入した種牡馬を自前の繁殖牝馬と交配するという、純粋な自家生産馬を走らせた。

 生産馬は自身で所有するだけではなく、他のオーナーに売却もしており、そのなかからGⅠ昇格前のスプリンターズステークス(中山・芝1200m)を制したキョウエイグリーン、サクライワイなど、自ら輸入した種牡馬マタドアの仔から活躍馬が出たこともあり、1973年にはそれまで10年連続で生産牧場ランキング首位を取り続けていた社台ファームをトップから引きずり下ろし、首位に立ったこともあった。

 その後は自家生産馬にこだわりすぎたためもあって血統の偏りが極端になり、成績が徐々に低下。牧場は創業者である西山正行の子息、茂行が中心となって繁殖牝馬の血統更新を図ることになった。
 
 1989年、西山茂行は米国のセリ市で、現役時代に米国のGⅠを4勝した実績を持つ種牡馬マジェスティックライトの仔を宿した繁殖牝馬を購買した。名をデュプリシトと言い、父に全米チャンピオンサイアーだったダンツィヒ(Danzig)を持ち、この母系からはクラシック三冠を制するなど米国の歴史的名馬として名高いセクレタリアト(Secretariat)も出している名牝系である。

 その年の4月19日、西山牧場でデュプリシトは黒鹿毛の小柄な牝馬を出産する。これがのちのニシノフラワーであり、牧場の機運を大きく高めることになる。
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