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なぜ英国人はクリケット伝統のシリーズ『ジ・アッシズ』に熱狂するのか。活躍した選手は国民的英雄になれる!?【現地コラム】

スティーブ・マッケンジー

2023.07.04

英国スポーツの伝統と格式が凝縮された空間。それが“聖地”ローズだ。(C)Getty Images

英国スポーツの伝統と格式が凝縮された空間。それが“聖地”ローズだ。(C)Getty Images

 先週土曜日、私はイングランドで権威のあるスポーツイベントのひとつ、いや、もっとも権威のあるイベントのひとつに足を運んだ。

 それはクリケットの伝統的なビッグゲーム。イングランド代表とオーストラリア代表の間で5日間に渡って繰り広げられる『ジ・アッシズ』として広く知られている。クリケットはイングランドのみならずオーストラリアでも国技に近く、インド、パキスタン、ニュージーランド、南アフリカ、スリランカ、西インド諸島などでもポピュラーなスポーツだ。

 とはいえ、日本の方にとってクリケットはピンと来ないスポーツだろう。取り上げるメディアはほとんどないと想像する。ならば、もしあなたがワールドワイドなスポーツを好むのであれば、この機会にせめてジ・アッシズだけでも知っていただきたい。

 今回のジ・アッシズは、ロンドン北部のローズ・クリケット・グラウンドで行なわれた。実に英国的な雰囲気を醸し出すクリケットの「聖地」であり、ビートルズのレコーディングスタジオとして有名なアビーロード・スタジオのすぐ傍に位置する。

 ローズのクラブメンバーは有名で、彼らはスカーレットとゴールドの服を身につけていることから“ベーコンエッグ”と称される。大半は上流階級の人々だ。
 
 1882年、クリケットのオーストラリア代表がオーバル(英国のクリケット場)で初めてイングランド代表に勝利した。当時の新聞では、「イングランドのクリケットは死滅した」「遺体は火葬され、彼らの灰はオーストラリアに運ばれる」と皮肉たっぷりに書き立て、その「灰(アッシュ)」がジ・アッシズの由来となった。これもまた英国らしいネーミングだろう。

 ジ・アッシズはローズ(ロンドン)、エッジバストン(バーミンガム)、ヘディングリー(リーズ)、オールド・トラフォード(マンチェスター)、そしてオーバル(ロンドン)の国内5会場で開催される。オーストラリア代表は現在ジ・アッシズのホルダー。もしシリーズが引き分けに終わった場合は、オーストラリアがアッシズを保持するルールだ。

 5試合のなかでもっとも格式と注目度が高い一戦が、ローズで行なわれるものだ。他の試合会場よりも敷居が高いぶん、観客は奇抜な仮装や楽器の持ち込みを禁じられている。一方で、クリケットの試合では珍しく会場のムードは熱狂的で、観衆がとても騒がしい。いわゆるアウェー感を創出するためで、オーストラリア代表にとっては過酷な環境となるのだ。この日は3万2000人近い大観衆がスタンドを埋め尽くした。
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