アルファタウリがルーキーとして10戦を終えたばかりのニック・デ・フリースを解雇し、ダニエル・リカルドを新たなドライバーに起用した一件は、F１界に大きな驚きをもたらした。だが、同時にこの通算８勝のベテランがチーム、さらにはレッドブル・グループ全体にいかなる影響をもたらすかという興味も提供している。

　今季ここまでレッドブルのリザーブドライバーを務めてきた34歳のオーストラリア人が狙っているのは、マックス・フェルスタッペンからポイントで大きく引き離されてしまっているセルジオ・ペレスからレッドブルのシートを奪取することだとされ、そのためには今季残り12レースで角田裕毅とのチーム内対決に勝つことが必要とされるが、「AT04」は非常に操るのが難しい車であり、リカルドといえども苦労するのではないかとの指摘もある。
  　イギリスのF１専門サイト『PLANETF1.COM』は「リカルドには、勝つ、それも上手く勝つことが求められ、さもなければ今回の復帰は失敗となる」との厳しい見解を示し、今回の電撃人事のきっかけとなるピレリのタイヤテストでの好パフォーマンスについても、「実際のレースとは全く別の話である」と綴っている。

「シルバーストン（イギリスGP）ではアップデートの甲斐なく、10チーム中で最も遅かったアルファタウリにおいて、リカルドは角田にとって唯一の基準点となる可能性があるため、より競争は熾烈となることで、彼が抜きん出ることはさらに難しくなる。結果、自身をレッドブルのための“ショーウィンドウ”に並べることも困難となれば、彼のF１での夢も終わることになる」

　一方、角田については「日本人ドライバーの期待通りに事が進まなければ、昨季にハースのミック・シューマッハーが抱えたのと同じ問題に直面する可能性もある」と、ドイツ人ドライバーがベテランのケビン・マグヌッセンに取って代わられた件を挙げ、F１キャリア３年目と正念場を迎えている角田が「リカルドと並んで十分なレベルのパフォーマンスを発揮することで、F１に残るのに値するとヘルムート・マルコ（レッドブル顧問）に確信させる必要がある」と指摘した。

　デ・フリースに勝利し、マルコ顧問からも「角田は過小評価されている。彼は非力な車でも結果を残せることを示した」と称賛された角田だが、これが彼のキャリアを保証しているわけではなく、残りシーズンも厳しい競争と“審査”の時が続くと同メディア。もっとも、「来季、少なくともこの２人のいずれかはグリッドから姿を消すかもしれない。角田の場合、残りシーズンで一方的にリカルドに負ければ“貧乏くじ”を引くことになる」と、より厳しい状況に置かれているのは、リカルドの方だとしている。