バレーボール

VNL準々決勝へ、男子バレー日本代表はなぜ強くなったのか? 急成長を促した3つの大きな理由

THE DIGEST編集部

2023.07.20

日本代表を牽引する石川(14番)。写真:梅月智史(THE DIGEST写真部)

 かつては遠い目標だった国際大会でのメダル獲得が、現実に近づいている。20日深夜(日本時間21日0時)に行なわれるネーションズリーグ準々決勝、男子バレー日本代表の話だ。

 5月30日に始まった予選リーグは開幕10連勝と破竹の勢いを見せ、予選2位で決勝トーナメントへ進んだ。準々決勝の相手は今秋のオリンピック予選でも対戦するスロベニアで、昨夏の世界選手権でベスト4進出を果たした強豪だが、今の日本代表ならば勝てるのではないか。そんな希望を抱かせる強さがある。

 ではなぜ、日本代表はこれほど強くなったのか。大きな理由は3つある。
 
 まず1つ目は、2017年にコーチとして就任したフィリップ・ブラン氏が監督となり、日本代表が取り組む戦術がより明確になったことだろう。これまでは海外勢の高さに対して、トスの速さで対抗してきたが、いくらトスが速くなっても相手のブロッカーがそこで待ち構えていたら意味をなさない。むしろ速さを求めるあまりトスが低くなれば打てるコースが限られてしまう。世界の高さを意識しすぎて独自の策に走るのではなく、世界のトップを争うチームがどう戦うかをブラン監督が明確に示し、日本代表も着手してきた。ミドルブロッカーの速攻とバックアタックを多用する中で、サイドからの攻撃を速くする。さらに相手の攻撃に対してもデータをもとに攻撃頻度の多いパターンにブロックを仕掛ける守備の戦術も、ブラン監督の指導の賜物と言える。

 そして2つ目が、指揮官が明確に世界を示すことにより、選手たちの視線や意識も日本だけでなく世界へと向けられたことだ。長年、日本のバレーボール選手は高校や大学を卒業後、日本のVリーグでプレーするのが常とされてきた。現在も日本代表の大半がVリーグに所属する選手ではあるが、昨季は主将の石川祐希と髙橋藍がイタリアで、宮浦健人はポーランドでプレーし、一昨年は西田有志がイタリア、関田誠大がポーランドへ渡った。

 イタリア・セリエAのプレーオフでセミファイナル進出を果たしたミラノにおいて中心選手として活躍する石川だけでなく、ポーランドでは出場機会が限られた宮浦も日常の練習や試合から高さで勝る選手を相手にすることで、技術に磨きがかかり、トレーニングを重ねたことで体は一回りも二回りも大きくなった。

 また全員に専属の通訳がつくわけではなく、現地では英語やイタリア語でコミュニケーションを取っており、語学力の向上も日本代表でブラン監督とコミュニケーションをとる際にはプラスへと働く。井の中の蛙ではなく大海へと飛び出したことが、日本代表を強くしたのは間違いない。
 
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先頭を走るリーダーの存在に国内選手の意識も引き上げられた