2021年夏、東京五輪の最中に起こった"亡命事件"は世界を驚かせた。
あれからおよそ2年、女子陸上選手のクリスツィーナ・ツィマノウスカヤはついに、新たな国の代表として国際大会への復帰を果たす資格を得た。英紙『The Guardian』のインタビュー取材を受け、喜びの言葉とともに苦難に満ちた日々を振り返っている。
【画像】ツィマノウスカヤが最近SNSに投稿した"最愛の夫とのツーショット"をチェック!
事の発端は、2021年8月1日の夕刻だ。イスタンブール行きの飛行機に搭乗予定だったツィマノウスカヤは、これを土壇場でキャンセルして、羽田の空港警察に保護を求めた。突然の五輪代表選手の登場に、マスコミや野次馬が殺到するなど空港は一時騒然となる。その後ツィマノウスカヤは、ベラルーシ政府による弾圧からアスリートを守る市民団体「BBSF」を通してビデオメッセージを発信し、騒動の全容を打ち明けた。
その前日の7月31日、ツィマノウスカヤはベラルーシ陸上チームのコーチ陣から理不尽な仕打ちを受けたという。翌日に出場予定だった東京五輪・陸上女子200メートルのエントリーをキャンセルし、5日後の金曜日に開催される4×400メートルリレーに鞍替えするように命じられたのだ。複数のリレーメンバーが出場条件のドーピング検査を受けていなかったのが理由で、その穴埋めに指名されたのである。
この決定にツィマノウスカヤは憤慨。自身のインスタグラム上でコーチ陣の不手際と強引な種目変更を公然と批判した。すると、ベラルーシ国内でこれが大問題に発展する。種目変更の指示はベラルーシ五輪委員会から出されており、その会長を務めるのは、「欧州最後の独裁者」と称されるアレクサンドル・ルカシェンコ大統領の長男。やがて国営放送『ONT』が「彼女にはチームスピリットが欠けている」と吊り上げ、バッシングの一大キャンペーンを展開したのだ。
インスタグラムのアカウントは削除され、ふたりのコーチがツィマノウスカヤの部屋に押し入って「明らかな政権批判だ!」「荷物をまとめて帰国しろ!」と強要。「怪我をしたことにしておけ」と指示もされたという。選手本人から当時の状況を聞いたジャーナリストは「誘拐に近い状況で空港に無理やり連れていかれた」と伝えていた。
そしてツィマノウスカヤは付き添いの関係者がいなくなったのを確認して、空港にいた警察官に保護を求めた。「このまま帰ったら刑務所に入れられてしまう。亡命を手助けしてほしい」と身の危険を訴えたのだ。オーストリアやチェコが亡命先の候補に挙がるなか、ルカシェンコ政権に懐疑的なスタンスを取るポーランドが支援を約束。BBSFの拠点もあるワルシャワに迎えるべく、急きょ"人道的ビザ"を発給し、亡命を実現させたのである。
ツィマノウスカヤからの告発を受けたIOC(国際オリンピック委員会)はすぐさま動く。当該のコーチ2名、ユーリ・マイシェビチ氏とアルトゥール・シマク氏に「大会参加の資格剥奪」を言い渡し、選手村から追放したのである。
あれからおよそ2年、女子陸上選手のクリスツィーナ・ツィマノウスカヤはついに、新たな国の代表として国際大会への復帰を果たす資格を得た。英紙『The Guardian』のインタビュー取材を受け、喜びの言葉とともに苦難に満ちた日々を振り返っている。
【画像】ツィマノウスカヤが最近SNSに投稿した"最愛の夫とのツーショット"をチェック!
事の発端は、2021年8月1日の夕刻だ。イスタンブール行きの飛行機に搭乗予定だったツィマノウスカヤは、これを土壇場でキャンセルして、羽田の空港警察に保護を求めた。突然の五輪代表選手の登場に、マスコミや野次馬が殺到するなど空港は一時騒然となる。その後ツィマノウスカヤは、ベラルーシ政府による弾圧からアスリートを守る市民団体「BBSF」を通してビデオメッセージを発信し、騒動の全容を打ち明けた。
その前日の7月31日、ツィマノウスカヤはベラルーシ陸上チームのコーチ陣から理不尽な仕打ちを受けたという。翌日に出場予定だった東京五輪・陸上女子200メートルのエントリーをキャンセルし、5日後の金曜日に開催される4×400メートルリレーに鞍替えするように命じられたのだ。複数のリレーメンバーが出場条件のドーピング検査を受けていなかったのが理由で、その穴埋めに指名されたのである。
この決定にツィマノウスカヤは憤慨。自身のインスタグラム上でコーチ陣の不手際と強引な種目変更を公然と批判した。すると、ベラルーシ国内でこれが大問題に発展する。種目変更の指示はベラルーシ五輪委員会から出されており、その会長を務めるのは、「欧州最後の独裁者」と称されるアレクサンドル・ルカシェンコ大統領の長男。やがて国営放送『ONT』が「彼女にはチームスピリットが欠けている」と吊り上げ、バッシングの一大キャンペーンを展開したのだ。
インスタグラムのアカウントは削除され、ふたりのコーチがツィマノウスカヤの部屋に押し入って「明らかな政権批判だ!」「荷物をまとめて帰国しろ!」と強要。「怪我をしたことにしておけ」と指示もされたという。選手本人から当時の状況を聞いたジャーナリストは「誘拐に近い状況で空港に無理やり連れていかれた」と伝えていた。
そしてツィマノウスカヤは付き添いの関係者がいなくなったのを確認して、空港にいた警察官に保護を求めた。「このまま帰ったら刑務所に入れられてしまう。亡命を手助けしてほしい」と身の危険を訴えたのだ。オーストリアやチェコが亡命先の候補に挙がるなか、ルカシェンコ政権に懐疑的なスタンスを取るポーランドが支援を約束。BBSFの拠点もあるワルシャワに迎えるべく、急きょ"人道的ビザ"を発給し、亡命を実現させたのである。
ツィマノウスカヤからの告発を受けたIOC(国際オリンピック委員会)はすぐさま動く。当該のコーチ2名、ユーリ・マイシェビチ氏とアルトゥール・シマク氏に「大会参加の資格剥奪」を言い渡し、選手村から追放したのである。