ゴルフ

渋野日向子が愛される理由――逆境に負けない強靭なメンタルと”笑顔”のルーツを探る

山西英希

2019.12.14

全英オープンのハイタッチも印象的だった渋野。子どもを目にすると自ら積極的に手を差し伸べる。(C)Getty Images

 日本人として42年ぶりに海外メジャーを制したことで、いきなり世間の注目を浴びた渋野日向子。その優勝がフロックではないと証明するかのように、帰国後に出場した13試合では優勝2回を含むトップテン入りが7回もあった。結果的に賞金ランキングは1位の鈴木愛にあと一歩及ばない2位で終えたが、それ以上に渋野の強さを証明する数字がある。バウンスバック率だ。

 これは、ボギー、もしくはそれよりも悪いスコアを叩いたホールの直後に、バーディー、もしくはそれよりもいいスコアをマークする率である。渋野は26・0684パーセントで第1位となった。それだけ切り替えが早いし、逆境を跳ね除けるだけのメンタル力があるという証明でもある。ツアープロといえどもパーセーブできなければ、気分的に落ち込むし、反省もする。しかし、強い選手ほどその度合いが小さく、逆にバーディーを獲ろうという気持ちが強くなる。渋野のメンタルも相当強そうだが、どのようにして鍛えられたのだろうか。その秘密は幼少期の育ち方にも少なからず関係しているように思える。
 
 渋野は三姉妹の次女として1998年11月15日に岡山県岡山市に生まれる。小学2年生で初めてゴルフクラブを握ったが、それとほぼ同時期にソフトボールも始めている。どちらも同級生の父親がコーチを務めており、誘われて始めたのがきっかけだった。実は両親ともゴルフの経験はない。父親の悟さんは円盤投げと砲丸投げの選手であり、母親の伸子さんはやり投げの選手だった。ともに筑波大の陸上競技部に籍を置いていただけに、レベルの高いアスリートである。

 渋野について、「小さい頃から活発で運動神経がよかった」と悟さんは語るが、両親の遺伝子はしっかり受け継がれているのだろう。ソフトボールでもピッチャーとして活躍していたという。もちろん、どんな競技でも才能だけでこなせるほど甘い世界ではない。渋野が相当な練習量をこなしていたことは容易に想像できる。

 ただ、個人競技のゴルフだけでなく、ソフトボールという団体競技を経験したことは渋野にとってプラスに働いたのではないか。自分のミス以外で試合に負けることもあれば、自分のミスを仲間がカバーしてくれることもあるからだ。特に、ピッチャーはその経験が多いだけに、気持ちの切り替えが要求される。結果、渋野も自然とメンタルが強くなったように思う。