勝てば官軍の舞台にあって、まずは必要な結果は勝ち取った。

　９月10日、スタジアム・ド・トゥールーズ。ラグビー日本代表が４年に1度のビッグイベント、ワールドカップ・フランス大会の初戦に挑み、初出場のチリ代表を42―12で下した。

【PHOTO】いよいよ開幕！ラグビーW杯2023フランス大会に挑む日本代表メンバー（FW編） 　４トライ以上をマークしてもらえるボーナスポイントを含め、勝点５を手にした。加盟する予選プールDでは暫定首位。５チーム中２位以上が進める決勝トーナメントへ、数字のうえでは一歩、前進できた。

　次戦以降に繋がる最大の収穫は、誰が「実力を発揮する実力」を持っているのかを再確認できたことだ。

　もともと日本代表は、初戦を鬼門としていた。

　極端な注目度のもと緊張感が増し、相手が格下となれば必勝を期す思いが力みを生む。そのためか、初めて8強入りした前回大会でも初陣は苦戦。2大会ぶり出場のロシア代表に30―10と勝利も、ミスで足踏みしたのだ。

　そして今回も、タックルミスを重ねたり、ゴール前で組んだモールを途中で分断してしまったり、相手にチャンスを渡すだけのキックを放ってしまったりと、内容には課題を残した。

　もっともかような状況でも、普段通りの力を出した人はいる。それが「実力を発揮する実力」のある人にあたる。

　日本代表は次戦以降、イングランド代表をはじめとした強豪国と対峙する。

　内容的にタフだったチリ代表戦で「実力を発揮する実力」を証明した面々は、今後も枢軸に据えられやすいのではないか。

　初出場組では、シャープな突破を重ねて2トライ奪取のアマト・ファカタヴァ、両軍最多の19タックルを成功させたジャック・コーネルセンが効いた。

　日本大会を経験した面子では、流大、松田力也、中村亮土といったスクラムハーフ、スタンドオフ、インサイドセンターというプレーメーカーを担った３名が球さばきの緩急、防御を引き寄せながらのパスで魅した。

　さらに松田に至っては、6本あったゴールキックをすべて成功させた。事前試合で外すこともあったとあり、その復調ぶりに安堵したファンは多かったのではないか。本人の感触はこうだ。

「プレッシャーがかかるなかでも自分のキックをどれだけできるかにフォーカスを置いていた。それがよかったです。自分のキックを蹴れば、入ると思ったので。入れに行くのではなく、自分のキックを蹴る」