10月15日、パリ五輪のマラソン日本代表選考レース『マラソングランドチャンピオンシップ（MGC）』が行なわれ、女子では東京五輪８位の一山麻緒（資生堂）が２時間24分43秒で2位に入り、パリへの切符を掴みとった。

　23キロすぎに集団から飛び出した一山。これに細田あい（エディオン）が付いたが、33キロ過ぎにライバルを引き離し単独首位に躍り出た。38キロ過ぎに鈴木優花（第一生命）に交わされトップを譲ると、２位で競技場に戻った。後ろから細田が迫るなか、一山に力を与えたのは、男子の日本記録保持者である夫・鈴木健吾（富士通）だった。

　同日開催だった男子の優勝候補であった鈴木健吾は、股関節周りの怪我で練習が積めていなかったこともあり、12キロ付近で途中棄権を選択していた。そして、一足先に競技場に戻ると、ラストスパートをかける妻に声援を送ったのだ。
  　五輪内定を決めた一山は、レース後の会見で「特にこの２年間は『もう走りたくないな』って思うことが増え、彼がいてくれて、『一緒に頑張っていきたい』『パリに向けて一緒に頑張っていこう』という声かけ、支えが今日までもすごくあった」と涙ぐみながら明かしたうえで、「走っているときも最後まで夫婦でパリに行きたいっていう思いで今日も走りました」と声を振り絞った。

　そんな妻の力走を目に焼きつけた夫の鈴木健吾は、「東京オリンピックが終わって、次は一緒にっていうことで４年間やってきて、僕はちょっと取れなかったんですけど、有限実行をした妻を誇りに思います」と称えている。

　今度は鈴木健吾が結果を出す番だ。念願の夫婦での五輪出場を目指し、今年12月から始まるMGCファイナルチャレンジに挑む。

取材・文●永野祐吏（THE DIGEST編集部）

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