パリ五輪の切符を懸けた「マラソングランドチャンピオンシップ（MGC）」が10月15日、東京・国立競技場発着のコースで行なわれ、男子は小山直城（Honda）が２時間８分57秒で優勝。赤﨑暁（九電工）が２位に入り、上位２名がオリンピック出場権を手にした。

　一方で、36歳のベテランランナーが大いにレースを盛り上げた。２時間９分18秒の４位でフィニッシュした川内優輝（AD損保）である。３位の大迫傑（Nike）とは、わずか７秒差の僅差で、レース後は悔し気な表情を浮かべた。

　川内は号砲とともにスタートからかっ飛ぶと、序盤には集団から離れ独走態勢に。冷たい雨が叩きつける悪コンディションを物ともせず、大逃げを打った。

　30キロ過ぎまで、影を踏ませぬ快走でレースを引っ張った川内は「半分ぐらいの選手は勇気がなくて、私についていくのが怖かったのだと思う」と振り返り、レースプランにしてやったりの表情。続けて、「もう半分はナメていたんですよ。あんな選手はどうせ落ちていくだろうと。そこは『ナメんなよ！』という感じでしたね」とベテランは茶目っ気たっぷりな表情で語った。
  　13日の公式会見では「私に負けているようじゃ日本のマラソンは暗黒期に入ると思います」と自虐気味に述べたが、「まさか35キロまで追いつかれないと思っていなかった。ハーフ地点ぐらいでは追いつかれると思っていたんですけど」と言い、自分の走りが良かったとはいえ、終盤まで追い上げることができなかった後輩たちに手厳しい言葉を送る。

「今日の小山選手や大迫選手がやったような走りの強化版をやらないと選手権レースでは勝てないので、力がなければ最初からいくしかない。若い選手にも勇気を持っていってほしいと思いますし。海外に出てもっと経験を積んでほしいと思います」

　五輪切符を掴む目前まで力走した川内。ベテランの奮闘は、日本の男子マラソン界に発破をかける価値ある結果を残した。

取材・文●湯川泰佑輝（THE DIGEST編集部）

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