最近はめっきり近況が伝わってこないが、パリ五輪出場に向けて独自でトレーニングを重ねているようだ。中国競泳界のスーパースター、孫楊（スン・ヤン）である。

　2018年９月のドーピング抜き打ち検査で妨害行為に及び、その後およそ３年半に及ぶ審理を経て、21年６月に「４年３か月」の資格停止処分が確定した。処分は24年５月28日に解除されるため、来年７月に開催されるパリ五輪には間に合う計算だ。処分決定直後、孫楊は「自信は揺らいでいない。自分を奮い立たせて頑張ろうという気持ちでいっぱいだ。私はパリを目ざす！」と決意を新たにしていた。

　そんななか、中国水泳協会が先週、興味深い発表を行なった。パリ五輪に向けた競泳の中国代表選考会として、国内選手権を来年４月に開催することを決めたのだ。これに中国メディアはすぐさま反応。『星洲日報』紙は「中国選手権に出場できないとなれば、英雄・孫楊のパリ五輪出場は絶望的だ」と記した。

　しかしその一方で同紙は、「協会が発表したスケジュールには『具体的な日時は変更される可能性がある』との注意書きが存在する。これは見落とせない」と指摘し、「協会側が孫楊の停止期間が明ける５月28日以降に大会を延期するかもしれず、特例措置として独自の選考会を催すかもしれない」との見解を示した。
  　ロンドン＆リオ五輪の自由形で合計３つの金メダルを獲得し、いまだ中国国内では絶大な人気を誇る孫楊。とはいえ、パリ五輪開幕の時点で32歳を迎えており、この３年間はまったく公式大会に出ておらず、トレーニングも私的な活動の範囲内に限定されてきた。『星洲日報』紙は「練習を重ねているようだが、やはり最大の懸念は孫楊のコンディションだ。もし選考会に出場できたとしても、五輪参加標準記録を突破しなければいならない。いずれにせよ、厳しい局面であることに変わりはないのだ」と論じている。

　もし中国競泳協会が孫楊のために大会の日程をずらす判断を下せば、それはそれで欧米メディアや現役選手たちから相応の反発を受けるのは必至。彼らにとって孫楊は「許されざるアスリート」であり、ドーピング疑惑が浮上して以降は、公然と批判する選手が後を絶たず、表彰台に並び立つことを拒否する選手たちもいたほどだ。

　はたして孫楊を巡る一大ドタバタ劇は、いかなるエンディングを迎えるのか。まだまだその動向から目が離せない。

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