ラグビー

「一人で何でもできる」NZ代表モウンガが魅せた世界最高峰のプレーにリーチも感嘆!ワールドクラスの競演でリーグワン活性化

吉田治良

2023.12.18

随所にワールドクラスのプレーで魅了したBL東京のモウンガ。(C) Getty Images

 伝統の一戦、「府中ダービー」のピッチに、10月のラグビー・ワールドカップ決勝を戦ったメンバーが4人も立っていた。

 東京サントリーサンゴリアス(東京SG)には、W杯連覇を成し遂げた南アフリカ代表の"ポケットロケット"ことチェスリン・コルビと、僅差の準優勝に終わったニュージーランド代表の主将サム・ケイン、そして東芝ブレイブルーパス東京(BL東京)には、オールブラックス・コンビのFLシャノン・フリゼルとSOリッチー・モウンガ。今季リーグワンに参戦した正真正銘のワールドクラスたちのプレーを堪能しようと、会場の味の素スタジアムにはレギュラーシーズン最多記録を更新する3万1953人の観衆が詰めかけた。

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 ともに2023-24シーズンの開幕戦で白星を飾り、連勝を狙ってダービーに臨んだ両チームだったが、この日はコリジョン(衝突)バトルの優劣が勝敗を分けた。

 BL東京の主将リーチマイケルが、「サントリー(東京SG)はテンポのチーム。危険なランナーもたくさんいるので、接点で止めてテンポを出させないことを意識した」と胸を張れば、東京SGの主将、堀越康介は「もっとスピードを出したかったが、コリジョンバトルで思った以上にプレッシャーを受けてミスを連発してしまった」と悔しさを滲ませる。それがすべてだったと言ってもいい。

 開幕戦で昨季王者のクボタスピアーズ船橋・東京ベイに快勝(52-26)した東京SGだが、この日は日本代表の松島幸太朗と昨季リーグワンのトライ王・尾崎晟也の両ウイングに、FBのコルビを加えた"魅惑のバックスリー"に、なかなかいい形でボールが出なかった。

 それでも6-19と13点差をつけられて迎えた36分、東京SGは松島からコルビを飛ばして尾崎晟につなぎ、開幕戦ハットトリックと好調のその尾崎晟がモウンガのタックルを振り切って右隅にトライ。SO高本幹也の難しい角度からのコンバージョンも決まって6点差に迫ると、さらに物怖じしない帝京大卒のルーキーは51分にも冷静にPGを沈めて、その差は3点に。

 しかし、東京SGに傾きかけた後半立ち上がりの嫌な流れを、BL東京の新司令塔、モウンガが断ち切る。56分、右サイドでフリーになっていた途中出場の伊藤鐘平に正確無比のキックパスを通す。これを足掛かりとしてその1分後、ゲームを決めるフリゼルの力感溢れるトライが生まれた。

「引き出しが多くて、一人で何でもできる」

 そうリーチが賞賛するオールブラックスの頭脳が、まさに今回の府中ダービーの主役だった。鋭い縦への突進から11分の先制トライをアシストすると、22分には「相手の松島がかなり(内側に)寄っていたので、ジョネ(・ナイカブラ)が空くと思った」という咄嗟の判断で、右WTBナイカブラに右足アウトサイドでスライス系のキックパスを供給。ここから開幕戦4トライと尾崎晟以上に絶好調のナイカブラのトライが生まれるのだが、モウンガ本人は「あれは単純なキック。素晴らしかったのはジョネのスキルとパワー」と、こともなげに振り返る。
 
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対峙した東京SGの選手たちもモウンガの凄みに感嘆