専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
フィギュア

なぜ本田真凜は“不退転の決意”で2分50秒を滑ったのか?「何ひとつ悔いなし!」スケーター、競技者として戦い抜いた誇り【フィギュア全日本選手権】

湯川泰佑輝(THE DIGEST編集部)

2023.12.23

9度目の全日本選手権に臨んだ本田真凜。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

9度目の全日本選手権に臨んだ本田真凜。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

「すっきりした気持ち。悔いも何ひとつない」

 9年連続の大舞台を終えたかつての世界ジュニア女王は、晴れやかな顔つきで取材陣の前でそう答えた。まるで、ラストダンスを終えたかのように――。

 12月22日、長野市・ビッグハットで熱戦が繰り広げられているフィギュアスケートの全日本選手権。大会2日目は女子ショートプログラムが行なわれ、2016年の世界ジュニア女王・本田真凜が登場した。

 前日に公表した右骨盤の痛みを抱えながら、大きな歓声を一身に浴びた22歳は44.42点でフィニッシュ。大学ラストイヤーで迎えた全日本を「集大成」と位置付けた戦いが終わった。

 決戦前、”異変”は深刻だった。前々日(21日)の公式練習で右腰に手をあてて気にする仕草をしていた本田は、強度の高いジャンプをほとんどしなかった。むしろ避けるかのように、リンクの周りをグルグルまわり、ジャンプの軌道を確認する動きだけにセーブしていた。

 そして本田は、その日の夜に自身の公式インスタグラムを更新。長野に入る前からの練習中に右骨盤を痛めてしまったことを公表した。

 不安要素を抱えながらも不退転の決意をインスタに綴り、決戦の舞台に臨んだ彼女は、のちに取材のミックスゾーンで「本当に今回、自分の長いスケート生活の中でも一番と言っていいくらい、すごく悪い状態」だと明かし、まさに満身創痍なコンディションのなか2分50秒を滑り切った。
 
 当日の公式練習でも状態は変わらなかった。記者席から見ても顔色は悪く、3回転ジャンプはほぼできず、ほとんど2回転にとどめ、踏み切り時に力を入れるアクセルジャンプは回避。とても大舞台で戦えるコンディションではなかった。だが彼女の中で、特に今年の全日本に関しては「棄権」という考えは一切なかった。

「たとえ何もできなくても、ジャンプとかスピンとかが何もうまくいかなくても、全力で思い切って、一生懸命最後まで滑る自分というのを自分自身にも見せたかったです。どんな状態の時でも、たくさん応援してくださってる方がいて、その方に棄権という形ではなくて、自分のできることを一生懸命見せられたらという気持ちでした」

 競技者として戦う覚悟を決めた本田。さらに今年は大学生として迎える最後の全日本ということで、「特別な気持ちもあった」と話し、9年間掴み続けた大舞台への強い想いが彼女を突き動かした。
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号