格闘技・プロレス

「嬉しいやら寂しいやら悲しいやらで」MMAキャリアに別れ… 引退の山本美憂、最強の相手に敗れ何を語ったか?【RIZIN】

橋本宗洋

2024.01.02

伊澤星花との引退試合に臨んだ山本美憂(右)。あくまで勝ちに行った一戦だったが…。写真:永島裕基

 2023年、RIZIN大晦日興行のポスターにはこんなキャッチコピーがつけられていた。
「泣いて、笑って、格闘技」

 単なる勝ち負けではなくドラマを見せる、喜怒哀楽を表現する。それがRIZINという舞台であり、その最大のイベントが大晦日興行だ。

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 そんな特別な場所で、まさに「泣いて、笑って」の人生模様を見せたのが山本美憂だった。

 女子レスリングのパイオニアはRIZINでMMAデビュー。初戦でRENAに敗れると連敗を喫したが、次第に新たなジャンルに対応。4連勝を飾りタイトルマッチも経験した。その挑戦する姿勢そのものがファンの心を掴んだと言っていい。

 49歳での引退試合も挑戦だった。対戦相手は現スーパーアトム級チャンピオンの伊澤星花。現在の立ち位置、勢いを考えれば無謀とも言えるマッチメイクだった。ただそれもRIZINらしさ。実力的な釣り合いよりもドラマ性という場合もあるのがRIZINのマッチメイクだ。

 セコンドにつく夫のカイル・アグォン、息子の山本アーセンとハグしてリングインした美憂。ゴングが鳴るとチャンピオン相手にまったく臆することがない。伊澤が再三、仕掛けてくるギロチンチョークをディフェンスしてトップをキープした。

「グラウンドは"あ、そんな感じか"と。フルラウンド闘ってもいけると思いました」

 手応えを掴んだ直後、落とし穴が待っていた。2ラウンドのことだ。美憂のタックルをかわして横についた伊澤が、そのままチョーク。美憂はタップするしかなかった。あれは自分のミスだったと美憂は振り返る。

「遠いほうの足を取りにいってしまって。MMAでは一番よくないやり方なんです。私の悪い癖で、練習でもよく注意されてるんですよ。それが思い切り出てしまった」

 悔しいですね、と美憂。3ラウンドまでしっかり闘いたかったし、勝つ自信もあったという。心境を聞かれると「なんか微妙な感じですね。スッキリはしてないです」。

 今のRIZINで一番強い女子選手に挑んで、負けた。よく使われる言葉でいえば、チャンピオンの伊澤に"介錯"してもらったというかたちだ。しかし美憂は介錯してもらうつもりなどなかった。あくまで勝ってMMAファイター人生を終わらせたかったのだ。
 
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「いろいろ考えなきゃと思います。人生にはいろいろあるから」