マラソン・駅伝

なぜ“区間新ラッシュ“は生まれたのか。箱根新時代の扉を開けた「ヒト」と「モノ」の進化

佐藤俊

2020.01.05

総合優勝した青山学院大だけでなく、他大学の選手の多くも記録を伸ばした。写真:日刊スポーツ/朝日新聞社

 箱根駅伝は、青山学院大が制し、王座奪還を果たした。

 優勝した青学大の選手の個性や監督に目がいきがちだが、なによりすごいのは、総合優勝を果たしたタイムである。

 往路は5時間21分16秒で、昨年に東洋大が出した5時間26分31秒を大幅に更新。復路は復路優勝こそ東海大に奪われたが、総合で10時間45分23秒は、昨年に東海大が出した10時間52分9秒を大幅に短縮し、大会新記録での優勝になった。

 一方、区間記録も更新ラッシュになった。

 今回、全10区間で区間新が生まれたのは7区間。どの区間新も強烈だったが、とりわけすごかったのがエース区間の2区、相澤晃(東洋大)が出した1時間5分57秒だ。これは平成21年にモグス(山梨学院大)が出した1時間6分4秒を7秒上回る、1時間5分台というとてつもないタイムである。2018年、マラソンで設楽悠汰が日本記録を久しぶりに更新した時に匹敵するぐらいのインパクトがあった。
 
 さらに3区では、昨年に森田歩稀(青学大・現GMO)が出した1時間1分26秒を、ヴィンセント(東京国際大)が59分25秒と1時間を切る驚異的なタイムで塗り替えた。この3区では、遠藤大地(帝京大)、田澤廉(駒澤大)も森田の記録を抜いている。

 4区では昨年に相澤が出した1時間54秒が「7年破られないだろう」と言われていたが、吉田祐也(青学大)があっさりと更新した。

 そして、山下りの6区では、昨年まで4年続けて任され、6区のスペシャリストと言われた小野田勇次(現トヨタ紡織)の57分57秒の記録を、館澤亨次(東海大)が57分17秒と驚愕のタイムを叩き出し、更新したのである。

 この記録ラッシュはいったいどういうことなのだろうか。

 正直、ここまで各区間のタイムが更新され、青学大の総合タイムが伸び、全体のレベルが上がってくるとは思わなかった。

 ただ、今にして思えば"流れ"はあった。

 昨年12月の全国高校駅伝(男子)では1区で八千代松陰高の佐藤一世が28分48秒で走り、上野裕一郎のタイム(28分54秒)を抜いた。6区では区間新が2名出ており、そのうちひとりは宮崎日大高の城戸洸輝で14分8秒というタイムだった。また、総合優勝を果たした仙台育英高は2時間1分32秒で歴代2位タイ、2位の倉敷高は2時間1分35秒で歴代3位の成績だった。