ラグビー

国内随一のハードタックラーに課された“世界一のフィットネス”。日本代表デビューを果たした24歳が向き合う「超速ラグビー」の肝

向風見也

2024.07.05

日本代表デビューも果たした山本。重心の低いプレーが持ち味だ。(C) Getty Images

 格闘技を見るのが好きだ。ただし自らが立つリングは、緑のフィールドである。

 山本凱。ラグビー日本代表になりたての24歳だ。

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 身長177センチ・体重100キロの体躯にあって、自身より大きな敵との身体衝突、接点での球の奪い合いで強靭さを示す。ぶつかるたびに鈍い音を鳴らす。慶応高、慶大にいた頃から、年代別の代表活動で海外選手とのフィジカリティで爪痕を残していた。

 2022年に入った東京サントリーサンゴリアスでは、シーズン途中から参戦した21年度から2季連続でゴールデンショルダーに輝いた。国内リーグワンにあって、選手投票で決める強烈なタックラーを讃える賞を掴んだ。

 23年には、世界の名手をその都度、選ぶバーバリアンズへ名を連ねた。サンゴリアスのディレクター・オブ・ラグビーだったエディー・ジョーンズがバーバリアンズを率いており、当時代表未経験のオープンサイドフランカーが抜擢された。

 24年、そのジョーンズが約9年ぶりに日本代表のヘッドコーチに登板した。すると山本も、同年の6月に代表入りした。

 まもなく知ったのは、厳しい現実だった。

 6月6日からの宮崎合宿がメディアに公開された10日以降、主力候補と見られるグループに山本が入ることは稀だった。

 選手が二手に分かれておこなう実戦練習では、主将となるリーチ マイケルや慶大の同級生だった原田衛とは異なる組に振り分けられがちだった。

 さらに、朝6時から断続的にある練習の合間には、身体作りの専門家であるジョン・プライヤー氏のもと別途で走り込みを課された。他の仲間がクールダウンに入る傍ら、芝の上をトップスピードで往復した。

 ジョーンズは今回、機動力と好判断が肝の「超速ラグビー」を提唱。かねて緻密な個別指導を好むとあり、期待のハードタックラーにもプランに即した宿題を与えていたのだ。

 山本が日本代表で定位置を確保するには、そのミッションと向き合わねばならなかった。

「(ランメニューを)毎日やれと言われています。エディーさんからは、『一つひとつのプレーはいいけど、それを何回もやれるようにならなきゃだめだ。日本の7番(オープンサイドフランカー)は、世界一フィットネス(持久力)がなきゃいけない』と…。僕も課題だと思っていたところを、ビシッと言っていただいた」
 
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「『そういう人の、代表』というか、先駆者というか、そういうものになればいいかなと」

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