フィギュア

なぜ日本フィギュアがNHK杯男女シングルSPトップ3を独占できたのか。異例の快挙を紐解くキーワードは“一体感”

湯川泰佑輝(THE DIGEST編集部)

2024.11.09

NHK杯SPの男女シングルは日本勢がトップ3を独占した。写真:田中研治(THE DIGEST写真部)

 日本勢が勢いあるスタートを切った。

 11月8日、フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第4戦NHK杯は国立代々木競技場第一体育館で行なわれ、女子ショートは世界女王の坂本花織が今季世界最高得点となる78.93点をマーク。2位には千葉百音(71.69点)、さらに青木祐奈がともに自己ベストを更新する69.78点で3位に入り、トップ3を日本勢が独占した。加えて、男子シングルのショートでも鍵山優真が今季ベストとなる105.70点を叩き出して首位に立つと、三浦佳生と壷井達也も好演技で続き、日本勢が1~3位を独占する異例の結果で折り返した。

 まだショート終了時点とはいえ、男女シングルで日の丸がトップ3を独占。まさに異例な光景だった。

 まず先に行なわれた男子シングルで21歳の壷井が好スタートを切った。冒頭の4回転サルコウを綺麗に降りると、以降もすべてのジャンプを着氷。演技を終えると、渾身のガッツポーズで喜びを爆発させた。昨年のNHK杯ショートは最下位という最悪のスタートだっただけに、今年はリベンジに成功した。「いま自分ができることは全部出し切れた。去年のショート(12位)があったので、本当に怖かった」と本音を漏らし、ガッツポーズは「打ち勝てた喜び」とはにかんだ。

 そして、全体10番目に登場した鍵山は完璧な演技を見せる。最初の4回転サルコウを鮮やかに着氷すると、続く4回転トウループ+3回転トウループの連続ジャンプも成功。トリプルアクセルをきっちり決めると、優雅に流れるような滑りでスピン、ステップは最高評価のレベル4を獲得。のちに本人も「演技自体はいいもの」と振り返ったように、まさに文句なしのパーフェクトで、演技後は両拳で笑顔のガッツポーズ。観客のスタンディングオベーションにはピースサインで応えた。注目の得点は今季世界2位を叩き出す高得点だった。
 
 最終滑走の三浦は大きなプレッシャーがかかるなか、冒頭の4回転サルコウ+3回転トウループの連続ジャンプを完璧に決めて勢いに乗った。スピードある滑走からトリプルアクセル、後半の4回転トウループも降りてフィニッシュすると、右手でガッツポーズが飛び出した。「ちょっとまだ興奮が残っていて、消化できていない」と興奮気味に話すと、「練習から調子が良くなくて、その中で集中してやるのが試された。練習から本番に切り替えられたのが一番良かった」と振り返った。

 記念撮影では3人でガッツポーズをとりながら、笑顔溢れる和やかな雰囲気だった。日本人が現時点でトップ3を独占したことを質問されると、鍵山は「それぞれやるべきことをすべて出しきった結果だと思う。最初にたっちゃん(壷井)からいい流れを作ってくれて僕たちもパワーをもらったので、それは本当に良かったと思います。三浦選手からも『流れ作ってよ』って言われたので、僕も頑張ろうと思いました(笑い)」と出番直前でのやり取りを明かした。「明日に関しても今日と一緒で、みんなが最初から最後まで100パーセントを尽くしたい」と切磋琢磨を誓った。

 一方の三浦は「彼(鍵山)は当たり前のように存在すると思うので、いったん置いておいて」と前置きし、「しっかり油断をせず、明日は明日、今日は今日でいったん忘れて、明日のフリーにまたいちから集中し直してベストパフォーマンスができるようになっていきたい」と気を引き締め直した。壷井は「2人はショートの貯金があるので(笑い)日本人独占の鍵は僕にかかっているなという気持ちがすごくあるので、フリーはまた別の試合が始まると思って、いちから集中して自分ができることを頑張っていきたい」と話した。
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日本女子に好影響「自分を奮い立たせてくれた」