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ラグビー

雪の秩父宮に響いた田中史朗の「声」。歴戦のベテランが見据える新天地キヤノンの意識改革

吉田治良

2020.01.19

田中はひと際大きな声を張り上げてチームメイトに指示を飛ばした。写真:滝川敏之

田中はひと際大きな声を張り上げてチームメイトに指示を飛ばした。写真:滝川敏之

 鈍色の空から、間断なく雪が舞い落ちてくる。

 気温わずか1℃。秩父宮ラグビー場は、それ自体が大きな冷蔵庫のように冷え切っていた。「傘をさしての観戦はご遠慮ください」とのアナウンスがしきりに流れていたが、屋根がないバックスタンドでの観戦は、それこそ荒行に近かっただろう。

 悪天候のコンディションは、もちろんピッチ上の選手にも小さくない影響を及ぼした。

 1月18日のラグビートップリーグ第2節、三菱重工相模原ダイナボアーズ(三菱重工)対キヤノンイーグルス(キヤノン)。

 開幕戦で昨季王者の神戸製鋼コベルコスティーラーズに敗れていたキヤノンは、ここでなんとしても初勝利を手にしたかった。しかし、13シーズンぶりのトップリーグ昇格となった三菱重工に、予想以上の苦戦を強いられる。

「こうした難しいコンディションでは、スマートなラグビーはできない。セットピース、モール、そしてなによりキッキングゲームが重要になると思っていた」
 
 そう試合後に語ったのは、キヤノンのアリスター・クッツェーHCだが、特に前半に関しては、フィジカル勝負で後手に回った印象がある。今季、パナソニックからキヤノンに移籍してきた35歳のベテランSH、田中史朗もこう振り返っている。

「もっとテンポ良くいきたかったが、ブレイクダウンの部分で相手も上手く絡んできて、あまりいいボールが出せなかった」

 開始6分にPGで先制されると、14分のトライで一度は逆転するも、その6分後には日本代表のSO、田村優のキックをチャージされて再逆転を許すなど、なかなかペースを掴めない。30分に相手ゴール前の密集からWTBホセア・サウマキが持ち出してキヤノンが、35分にモールからの連続アタックで三菱重工が、それぞれトライを重ねる一進一退の攻防。前半は15-10と三菱重工がリードして折り返した。

 後半、停滞気味のキヤノンに流れをもたらしたのは、ベテランの「声」だったのかもしれない。

 サッカーのように絶え間なくチャントが歌われるわけでも、野球のように鳴り物が打ち鳴らされ続けるわけでもないトップリーグのスタジアムでは、試合中の選手たちの「声」がダイレクトに観客席にまで届く。秩父宮規模のスタジアムなら、なおさらだろう。
 

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